第34話 東南アジア統一 後編

「いい進軍速度だ。呉が火縄銃の対抗策を練る前に呉を盗らねばならないからな。俺らが呉軍に優勢なのは火縄銃の存在が大きい、呉が対抗策を思いつかないか、思いついても実行するだけの時間を与えるな、とにかく一日でも早く呉の全領土を統治するのだ。気がかりなのは天才軍師の周瑜だが、どうやらまだ出てきていないらしいな」


「はい、ですが風魔忍軍の調べによると、すでに周瑜殿は兵をまとめ、二五万の大軍勢を率い魏との国境線から退いたとの事です」


「やはりそう上手くはいかないか、島津、長曾我部を戻す必要があるな」


「東南アジアでの戦果、滝川殿からの報せを受け取りましたので私が報告させて頂きます。東南アジアへの遠征軍、東南アジアを完全攻略」


「本当ですか!?」


 手を叩きそうな程に喜色の声を上げる蘭丸。光秀は優しい笑みで肯定した。


「こんな嘘がつけますか。やはり、信長様の戦争方針が功をそうしているようです」

「だろうな」


 信長は東南アジアと呉国攻略において、諸将にある戦争方針を打ち出している。


 まず最初は無条件で傘下に入る事を要求する。


 従わない組織集団、東南アジアの植民地化を狙う西洋の遠征軍は皆殺しと焼き討ち。容赦はしない。


 降伏させるのは時間がかかるし、後でまた裏切る可能性がある。最初から全員殺してしまえば時間もかからず不安要素も無い。


 ただし従わなくても領民から慕われている権力者には根気強く説得を試みる。


 これは領民から慕われる権力者を殺すと領民の不満を買い、のちの統治が難しくなるから。農民の一揆は面倒。


 逆に従わないかつ悪政を行う権力者は一族郎党幹部部下に至るまで皆殺し。


 殺した権力者の代わりに織田家の武将を置いて支配させる。


 民衆にはひたすら『侵略軍ではなく解放軍』『皆によりよい暮らしを提供しにきた』事を強調、とにかく民衆を味方につける。


 民衆は支配階級が嫌いなもの。民衆の支持という後ろ盾を得て、支配階級だけと敵対して、支配階級だけを殺して、そこに織田軍人を置く。


 攻略した土地はベトナム同様、農業畜産改革と経済改革や土木工事を行い、税率が高すぎるところは安くし、そうでないところは現状維持。


 『織田軍に従ったほうがいい生活ができる』『逆らっても百害あって一利無し』と覚えさせる。


 この戦争方針に従い、東南アジアは五万丁の鉄砲と一〇〇〇門の大砲、火矢による焼き討ちで敵対勢力を一掃。恭順交渉ではシャムのソンタム国王、そしてベトナムのチュン姉妹の用意した推薦状が力を発揮した。


 彼女達には織田軍が侵略者ではなく新たな統治者であり、よりよい生活と平和を与えてくれる人々である事、自分達は一戦も交えず恭順した事を記し署名をさせた書状を一〇〇枚ずつ用意させた。


 東南アジア攻略軍はこれを用い、平和を望む領主、勢力、敵軍指揮官を仲間に取りこんでいった。


 平和を望む勢力は全て無条件で傘下に。


 あくまで自身が東南アジア、もしくは世界の王になろうと企む勢力は圧倒的な武力で皆殺し。


 東南アジア攻略軍はこの二軸で瞬く間に東南アジアを統治していったのだ。


「また、宣教師や貿易商達ですが、本国ポルトガルとスペインが開戦。母国が戦果に包まれた影響もあり、東南アジアから完全に撤退したようです。加えて、彼らが逃げる際、滝川殿が交渉。西洋への撤退を追撃しない代わりに彼らの持つ火薬、硝石、大砲を安値で買い取る事に成功。火縄銃五〇〇万発分の火薬、二〇〇〇万発分の硝石、大砲四〇〇門を持って島津軍、長曾我部軍はこのベトナムに帰参するそうです」


「いい報告だ。では東南アジアを二つの区域に分ける。ルソン、スマトラ周辺の島々は滝川一益と尚巴志の軍が管理指導。ビルマ、シャム、カンボジア等の大陸部は丹羽長秀と山田長政が管理指導をするのだ。計五万の軍で東南アジアを管理。俺の軍五万のうち二万をベトナム残し俺も出陣する。残る四五万の軍で中華を落とすぞ‼ ついてこい光秀‼」


「はい! この明智十兵衛光秀、信長様の為とあらば、最果ての海までお供致します‼」


 光秀の冷静な顔、その中にあって二つの眼は武士の魂で燃え盛っていた。

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