第33話 東南アジア統一 前編

 島津義弘と長曾我部元親の性格を思い出して、信長は笑った。


「仕方あるまい、ただでさえ東南アジアは暑い、なのにこれから夏を迎えるのにさらに南下するとあっては南国育ちの兵を派遣するよりないだろう。それに東南アジアは一日でも早く統一し、中華との戦いに全力を注ぎたい。あの二軍の武力ならそれもすぐだろう」


「はい、既にこの三カ月でカンボジア、ビルマ、マラッカを落とし、既にルソン島を攻略中とのことです」


「うむ、それに東南アジアには交渉の上手い滝川一益も行かせている。奴の交渉に乗れば殺されずに済む。優しいだろう?」


 蘭丸は、鬼の軍を二つも送っている時点で逆らった場合の罰が重すぎる気もしたが、笑顔で頷いた。


「その通りですね♪」

「ははは」


 光秀が諸将に中華の説明をし終えてから、信長の行動は早かった。


 まず傘下に入ったベトナム、シャム以外の東南アジア諸国を統一する為に九万の兵をハノイから差し向けた。


 シャム同様、話し合いで傘下に加わってもらうのが一番良い為、交渉の上手い滝川一益とその軍二万。あくまで徹底抗戦を望む者を落とす為、長曾我部軍三万、島津軍三万、暑い土地での戦いに慣れている琉球王国の尚巴志軍一万、計九万の兵を東南アジア統一の為に動かした。


 三〇門以上の大砲を搭載した巨大鉄甲船二五〇隻で東南アジア諸国の海上は完全に日本軍が占領。


 既に東南アジアからはポルトガル、スペイン勢力は撤退し、各国の王は織田家の傘下に入る事を了解している。


 山田長政が既に根を深く下ろすシャム王国にはベトナム同様の国内改革を行うべく、政治面に優れた丹羽長秀とその軍二万を船で送り、ビルマと戦わせながらシャムの改革をしている。


 信長直属の軍隊五万は呉の目の前、ベトナムに駐留し、ベトナムの警護と各地の改革に従事させている。


 そして残る三四万の大軍勢は全て呉の国攻略へ向かわせた。


 呉の東の海、東シナ海は織田家水軍将九鬼嘉隆率いる三〇〇隻の巨大鉄甲船団が完全に主導権を握っている。呉の水軍は強力と噂だったが、火矢の利かない鋼の船、一撃で軍船に風穴を開ける大砲、そもそも船の大きさも違う。


 呉の水軍は九鬼嘉隆の鉄甲船団の前に連敗を帰している。


 呉の極東、海岸部は徳川軍九万が爆進。東日本最強本多忠勝を含めた徳川四天皇が港町を次々落としている。


 呉の東部は前田軍二万、伊達軍五万が破竹の勢いで敵の城を攻め落とし、平野では特に伊達家自慢の騎馬鉄砲隊が活躍している。


 呉の中央は羽柴軍二万、武田軍三万、立花軍四万が猛進中。武田騎馬軍団が平野で呉軍を滅ぼし、城攻めの得意な羽柴秀吉が次々砦と城を落とし、西日本最強と言われる立花宗茂引きいる南九州の男達はその両方で積極的に戦い武功を上げ続けている。


 最後に西側は柴田軍二万、上杉軍三万、明智軍二万が担当している。


 織田家随一の武断派柴田勝家軍二万と軍神上杉謙信軍三万が片っ端から呉軍と城を攻め滅ぼし、政治と交渉が得意な光秀の軍は攻略した領土の管理教育をしながら、呉の極西、蜀との国境線に睨みを利かせている。


 呉の西端を攻め落とさないのは、蜀との国境に触れれば蜀軍が進撃してくる可能性があるからだ。


 負けるとは言わないが、今はまだ呉蜀を同時に相手にする時ではない。


「信長様、明智光秀、参上つかまつりました」

「うむ、入れ」


 執務室の戸が開き、呉軍攻略に向かっている光秀が入室する。


 とは言っても光秀はあくまで後方担当。まだベトナムの近くにいるため、戻って来るのにはそれほど時間はかからない。


「では、早速呉の国攻略の報告をさせて頂きます」

「よし、語れ」


 待ちわびていたとばかりに信長は身を乗り出した。


「結果から言いますと、全軍順調。戦は全て連戦連勝、特に九鬼殿の水軍の働きで呉の水軍はほぼ壊滅状態。徳川殿の軍は上海に迫る勢いで、他の軍も快進撃を続け、呉国の南部全て、呉国全体の三分の一が織田家の支配下に入りました」

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