第26話 おっぱいならあたしだって大きいんだからね!
「いいのか宗茂、なんかあっちで勝手な事言われてるぞ」
近くの卓では幸村が宗茂に水を向ける。ちなみに幸村の隣では甲斐が『そうよ女は胸じゃないわよ!』と平たい胸を精一杯突き出しながら酒を煽っている。ヤケ酒だ。
別の卓では義経の横で彼の妻、静御前が同じくヤケ酒中だ。
宗茂は焼いた猪の肉を箸でつまんで答える。
「別にいいよ。どうせ俺は誾千代の胸にしか興味ないし。そして興味がないからこそ」
立ち上がり、宗茂はアウの席に近寄る。
そしてわざとらしく、
「始めましてアウ将軍、こちらの誾千代の夫の宗茂です。しかし聞かせてもらいましたが素晴らしい胸ですねぇ」
隣で誾千代が雷に打たれたような顔になる。
「宗茂貴様! 妻がいる身で白昼堂々女を口説くとは何事か不埒者!」
誾千代は泣きそうな顔で宗茂のむなぐらをつかんで迫り寄った。
「白昼堂々って今は夜だぞ?」
「屁理屈を言うな痴れ者が!」
と、言いながら自分の見事な爆乳を宗茂に押し当て自己主張する誾千代。
「この助平! 変態! 乳好き! 好きモノ!」
夫を罵倒しながら『胸なら自分だって大きいぞ』と言わばんばかりに必死に押し付ける誾千代。
怒る妻を眺めながらニヤニヤと笑い豊乳の感触を堪能する胸茂。
幸村は一人、『なんて上級者なんだ』とうち震えた。
「この浮気者がぁっ!」
「ぎゃあああああああ!」
「あ、宗茂の奴、電撃喰らってる……」
「…………、行って来る」
その時、甲斐が立ち上がり、アウの方を向いた。
「ちょっ、甲斐お前、いくら自分が貧乳だからってアウ将軍に」
「そんなんじゃないわよ!」
甲斐は幸村の顔面に右肘をめりこませ撃沈。
「アウ将軍」
男達を押しのけて、甲斐はアウの席の前に立った。
至って真面目な顔の甲斐に、アウも表情をあらためる。
「貴殿は?」
「織田家家臣、成田甲斐です。どうやったら女で将軍になれますか!」
直球な質問。アウは冷静に答える。
「男の豪傑よりもずっと強い事。ベトナムにはあたしより強い男がいない。それだけさ。まぁあたしの場合はベトナムの王様が女で女王様だから、女が偉い役職に就く事に世間も摩擦が無かったってのもあるけどね。甲斐、お前将軍になりたいのか?」
「え? いや、それはその……」
困った顔で視線を泳がせる甲斐。アウは膝を叩くと立ち上がる。
「甲斐、お前この前の戦いで何人殺した?」
「よ、四八六人……」
「武将は?」
「い、いません……全員雑兵です……」
甲斐が恥じいるように顔を伏せる。アウは口元をゆるめた。
「武人には格がある。百人力、一騎当千、万夫不当。貴殿は五百人力、といったところかな。あたしと仕合おうか、甲斐?」
「え?」
「誰か私の戟をここに!」
口調が変わり、アウの空気が研ぎ澄まされる。
「そそ、そんな、アウ将軍は病み上がりで」
「あんな矢傷、五日もあれば十分だ」
アウが右の太ももを見せると、そこには傷痕一つ無いなめらかな肌があった。
「そんな、あたしでも一週間はかかるのに!」
宗茂と慶次が薄笑いを浮かべる。
「俺なら三日で治るな」
「俺なら二日で治るぜ」
離れたところで幸村が、
「みんなバケモンだ……っと、そうじゃなくて」
幸村は急いで立ち上がった。
部下の一人がアウに戟(アジア風ハルバード)を渡し、アウは今一度甲斐に問う。
「で、どうする甲斐?」
「あ、あたしは」
「やめろよ甲斐」
そこで割り込んで来たのは幸村だ。慌てた様子で甲斐の肩をつかんで、アウに頭を下げる。
「すいませんアウ将軍、こいつ生意気で。おい戻るぞ甲斐」
「ちょっとやめてよ!」
甲斐の手を握って引くが、振りほどかれる。
「おいおい、相手はベトナム最強の武人だぞ。怪我でもしたらどうするんだよ」
「うっさいわね! 幸村には関係ないでしょ!」
「やるのかい?」
アウに言われ、甲斐は息を吞み、頷いた。
「やります!」
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