第16話 いざ大陸へ! 東南アジア、タイ王国へ到着!
四月に日本を出発した織田大船団は琉球王国を経由し、五月に家臣山田長政の待つシャム王国(現在のタイ)へ到着した。
「信長様ぁ!」
軍港に降り立つ信長の元へ、細身の青年が駆け寄る。
「おう山田か、出迎え大義である」
琉球王国よりもさらに南に位置する東南アジアの熱気溢れる国シャム王国。その昼前、カンカン照りの太陽の下で二人は面会する。
「傭兵団は大成功のようだな」
「はい、シャム王国とビルマは互いにポルトガルの傭兵団を雇っていましたので、ポルトガル人同士で争うのを嫌った傭兵達が働かず困っていたソンタム国王に雇って頂きました。私の屋敷でソンタム国王がお待ちです」
「うむ、では屋敷までの道すがら、東南アジアの状況を教えてもらおうか」
「はい」
二人は休む間もなく軍港から馬車に乗り、山田の屋敷へと向かった。
山田も信長のせっかちさは知っているため驚かない。
普通は一息休みをいれ、後日面会というのが普通だが、信長はとにかく時間を惜しむ男だった。
人生五〇年、その間にやりたい事全てをやろうと思えば並大抵の方法では不可能だ。とは信長の好きな敦盛の歌の言だ。
日本よりも暑く湿度の高い空気、広い葉の生い茂る木々が植樹された道を馬車で駆ける。
「現在、このユーラシア大陸は世界の覇権を巡って各国が常に戦争を続け、この東南アジア、中華が南蛮と呼ぶ地域も東南アジアの統一王を目指し戦争が起こりました。ここシャム王国と西のビルマとの争いもその一つです。ですが今、この南蛮は二つの驚異と戦っています」
「二つの驚異?」
「中華、そしてポルトガルやスペインなどの西洋諸国です」
山田は若いだけでなく、細身でやや童顔なので迫力はないが、信長の前の席に座ったまま、真剣な眼差しで語る。
「そもそも南蛮、特にベトナムは遥か昔から中華から属国や植民地のような扱いを受け、侵略や弾圧に苦しんでいました。その為、最初は東南アジアの統一王となった後は中華と戦をして完全に独立しようという風潮がありました。ですがそこに現れたのが信長様も知るあの宣教師達です」
宣教師と信長は深い付き合いがある。他の大名は神道や仏教を排するキリスト教を嫌ったが、合理主義の信長は西洋文化の中には日本より優れるモノもある事を知り、それらを取り込むべく彼らを受け入れた。
結果、織田家はどこよりも早く、それも多くの鉄砲や火薬を手に入れ、日本国内の戦を有利に進めた。
特に火薬の原料となる硝石は宣教師達を通じた西洋貿易で手に入れるのが一番だった。
「西洋は未だ鉄砲や火薬などの近代兵器の普及していないこの地を侵略し、アジア貿易の要所にしたいのです。結果、東南アジアは北の中華、西のヨーロッパの驚異に晒されながら、でもお互いを信じあう事ができず対立を繰り返すという状況が続いています。ソンタム王に与しビルマ軍を幾度となく撃退した私ですが、ビルマとシャムが手を組み共にヨーロッパ勢力と戦うべきと思っています」
やや弱気な顔の山田。信長はニヤリと笑った。
「安心しろ山田。この東南アジアは全て、俺が盗る」
救うでも守るでもなく、盗るという信長。だが山田は少しも焦らず、むしろ安堵の表情を浮かべる。
「それよりその中華とベトナムの事をもっと教えろ。俺も日本で世界の事は調べていたが知識に誤りがあるかもしれん。大陸に住むお前から最新の情報を聞きたい」
「はい、中華は信長様もご存じの国ではありますが、日本同様、現在は乱世が続いております。元々中華は秦、楚、斉、燕、趙、魏、韓の七つに分かれ覇権を争っていました。それを統一したのが秦の始皇帝と呼ばれる方です。ですが皇帝は不老不死を求め不老不死の薬と言われるモノを片っ端から吞んだところ、その一つが毒だったようで今は病に伏せっています」
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