5.映画館で、ムッとする絵麻。
「なぁ、親父? 映画は良いんだけどさ……」
「どうした、拓哉。なにか問題がありそうな顔だな」
――どうして、ラブロマンス映画?
俺は親父のセンスにツッコミを入れかけたが、ぐっと堪える。
映画館に入るなり父が選択したのは昨今、世間を賑わせているラブロマンス。なんでも少女漫画原作のものらしく、若い女性を中心に社会現象となっているらしかった。恵梨香さんや絵麻も例に漏れず、これの看板を見た時に笑顔に。
ただ、なんというか。
生まれた時から少年漫画で育ってきた俺には、敷居が高いというか……。
「……拓哉。お前に良いことを教えてやる」
「え、なんだよ急に……?」
そう考えていると、親父が俺の肩をガシッと掴んで耳打ちしてきた。
父が俺に託したアドバイス、というのは――。
「恋愛において一番なのは、相手を考えることだぞ」
「…………へ?」
なぜか、恋愛についてだった。
こちらが首を傾げるのも気にせずに、親父は続ける。
「お前は鈍いところがあるからな。女の子を泣かせるなよ?」
「え、いや。だから――」
「それじゃ、行くか!!」
「ま、待て! 親父!」
……いかん!
この父親は、完全に勘違いしていた!!
「俺と絵麻は、そういう関係じゃねぇぞ!?」
◆
映画が始まって、室内が暗くなる。
絵麻は隣に座る拓哉を見て、ほんの少しだけ――。
「ん、どうしたんだ。絵麻?」
「むぅ、なんでもないもん」
「…………え?」
頬を膨らせていた。
それというのも、先ほど拓哉と義父が話していた内容が聞こえていたのだ。たしかに自分と兄は、そんな関係ではない。それは分かっていた。
だが、絵麻はなにか釈然としない。
そして思うのだ。
「私――」
――どうしちゃったんだろう、と。
彼女自身、まだ気づかない。
それはきっとまだ、未熟なものに違いなかった。
――――
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