第1章
1.夢じゃなかった。
「どういうことだよ、親父!?」
「いやぁ、実は父さんと砂城さん、お付き合いしててな?」
俺の問いかけに対して、親父はニマニマしながら頭を掻いた。
そして隣にいる砂城――新しい母親こと恵梨香さんも、どこか恥ずかしそうに頬を抑えている。どうやらお付き合いしてて、今夜という聖夜に『再婚する』ということだった。で、そうなってくるとようやく砂城絵麻の、先ほどの発言につながるわけで。
「でも、いきなり『お兄ちゃん』って……」
「ん? 嫌だったか? でも拓哉この前、妹が欲しい、って言ってただろ」
「いや、うん。言った。たしかに、言ったけど……」
冗談に決まってるだろうがあああああああああああ!?
いきなり同級生が義妹になるよ、って言われて「はい、そうですか」なんて答えられるわけがないだろ!? 物事には順序ってものがあるんだよ!!
俺は混乱を抑え込むために、必死に頭を掻きむしる。
それでも、一向に気持ちは落ち着いてくれない。
そして、そんなこちらを無視して親父は――。
「さて、それじゃ俺たちは婚姻届けを出してくるぜ!」
「はぁ!? 今から!?」
「善は急げだ。この日を楽しみにしていたんだからなぁ!!」
「ちょ、待って――」
「あ、絵麻ちゃんの部屋は拓哉の隣な!」
「――馬鹿親父ぃぃぃぃぃぃ!!」
そう言って、親父と恵梨香さんは出て行ってしまった。
残されたのは俺と、義妹となる絵麻の二人。
「…………」
どうしたらいい、この状況。
考えろ。考えろ、考えろ考えろ考えろ……!
「あの……?」
「え……」
その時だった。
絵麻が小さく、遠慮がちにこう言ったのは。
「大丈夫ですか? 顔色が悪いよ、お兄ちゃん?」――と。
その言葉を聞いた瞬間。
俺の意識は、完全に闇の中に消え失せたのだった。
◆
「はっ……!? え、朝!?」
そして、次に目を覚ましたら。
俺は自室のベッドで、横になっていた。
寝ていたようだが、どうにも記憶が曖昧だ。
「というか、アレは現実、なのか……?」
そこに至って、俺は考え込む。
あまりに現実味のない出来事で、とても信じられなかった。
だから、しばらく考えてこんな結論に達する。
「あぁ、夢だったんだ」――と。
そうだ。
そうに決まっている。
あの砂城絵麻が、俺の義妹になるなんてあり得ない。生徒玄関で少し話したことで、妙な夢を見てしまった。それだけ。それだけのことだ。
そう考えたら、すべてに合点がいった。
俺は深くため息をついて、おもむろに立ち上がり部屋を出る。
「あ……」
「え……」
その時だった。
同じタイミングで、隣の部屋から砂城絵麻が出てきたのは。
彼女は、可愛らしいクマのイラストが描かれたパジャマを着ている。そして、恥ずかしそうに俺を見て微笑んだ。
とても、愛らしい。
学校で見ていた少女が、知らない表情を浮かべていた。
そして、こう挨拶する。
「おはよう、お兄ちゃんっ!」
眩暈がした。
どうやら、この新生活に慣れるには相当な時間がかかるらしい……。
――――
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