3.クリスマスプレゼント。








「どういうことだってーの……」



 俺は湯船につかりながら、そう口にした。

 まさか、砂城に声を掛けられるとは。しかも、俺に興味がある?

 そんなこと言われても、にわかに信じられるわけがなかった。だから風呂に入る今も、全然頭の中が整理できていない。

 彼女はいったい、何の用があったのか。

 それを考えて、かれこれ一時間は風呂場に留まっていた。



「いかんいかん。そろそろ、上がらないと」



 このままでは、のぼせてしまう。

 俺は気持ちを切り替えて、風呂を出て脱衣所へ。そして、身体を拭いてから服を着る。髪は半乾きのまま、肩にバスタオルをかけてリビングへ向かった。

 するとそこには、クリスマスの準備を進める親父の姿。



「…………ん?」



 だが、そこである違和感を覚えた。

 俺はそれを親父に訊ねる。



「なぁ、親父。今日は誰かくるのか?」

「……お、さすが。勘が鋭いな」

「いや。どう見ても二人分の料理じゃないからさ」



 時刻は間もなく二十三時。

 こんな夜更けに、誰がくるというのか。

 少なくとも四人分あるから、あと二人、来客があるはずだが。



「今日は、お前に凄いプレゼントがあるからな!」

「プレゼント……?」



 なんの話だ。

 しかし、それにしても親父めちゃくちゃ笑顔だな。

 それ自体は喜ばしいのだけど、やはり意味は分からないまま。



「なぁ、親父――」

「お! きたみたいだな!」



 違和感の正体を訊ねようとした。

 その時だ。


 インターホンが鳴ったのは。



「どうぞ、いらっしゃい!」



 すると親父は、一直線に玄関へ。

 俺も小走りでそちらへと向かって、そして――。





「…………へ?」






 硬直した。

 何故ならそこに――。





「こんばんは、小園くん」





 砂城絵麻が、彼女の母親らしき人と一緒に立っていたのだから。









「どういう、こと?」

「まぁ、待て。日付が変わったら言うから」

「日付が変わったら……?」



 リビングで食卓を囲みながら。

 俺は、息の詰まるような空気に圧し潰されそうになっていた。

 だって隣には、学園の高嶺の花――砂城絵麻。生徒玄関の距離よりも、さらに縮まったところにいる彼女は、相も変わらず表情を崩さない。


 本当に、意味が分からない。

 だが、その答えは日付が変わった瞬間にもたらされた。




「あ、クリスマス……」




 俺は、時計の針が十二を差した瞬間。

 無意識のうちに、そう呟いていた。すると――。




「ん……?」




 隣に座る砂城に、服の袖を引っ張られる。

 何事かと思ってそちらを見ると、彼女は珍しく頬を赤らめて言った。










「これから、よろしくです。――お兄ちゃん」














 …………へ?






「えええええええええええええええええええええええ!?」









 ――小園拓哉、高校二年生のクリスマス。



 その日、突然に。

 俺に義妹ができたのでした。



 





――――

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