〇伏線を伏線だと完璧に理解できるのは作者だけ
タイトルで既に完結してしまっていますが、取り敢えず内容をば。
……先日、自作品の導入部が動線としてうまく作用しているかを見てもらうべく、二次創作時代からの友人に序章を読んでもらいました。
感想としては概ね想定通りに作用していたものの、その際に友人が一言。
「君――考えながら読んでほしいね?」
図星でした。
擬音がついていたら、まさしく「ギクーッ!」と言うべきほどには。
目から鱗が落ちて、気がつきました――「既知の友人だったから気づいてもらえたけれども、他の人も常とは限らない」と。
それが収束して「伏線を伏線だと完璧に理解できるのは作者だけ」に至ります。
伏線とは、物語上に散りばめられ、読み進めたのちに繋がって効果を発揮する特殊ギミックとも呼ぶべきものです。
言い始めると大半がネタバレと化してしまうのが辛いところですが、「あの時のあれはこういうことだったのか!」と想起されるものが伏線収集と言えるのではないでしょうか。布石も似たような意味で使われますが、個人的には布石は個で効果を発揮する点、伏線は連鎖的に効果を発揮する線だと思っています。
どちらの場合でも先んじて仕込んでおくギミックには変わりありませんが、いずれにせよ初見読者には、その作品のどこに伏線があるのかが露骨ではお話になりません。
そしてそもそも伏線があるのか判然としなければ、本腰を入れて読むことも叶いません。情報を額縁通りに捉えるべきか否かだけでも分かれば、作品世界を歩く道標と成り得るでしょう。
宝探しをするためには、『どうやらここには宝があるらしいぞ』という情報を得なければならないのです。
翻っては「既出情報以外を深読みするためには、相応の情報量が必要である」とも言えます。
無論、相応の情報量とは人それぞれではありますが、一を聞いて十を知るとはなかなかいかないのものです。十を聞いて十一を知るくらいが現実的なところでしょうか。
そして伏線があると知っていたとしても、伏線が一つだけで、素通りされてしまっていては元も子もありません。バレるのも問題ですが、知られないままも問題です。
伏線について「物語上に散りばめられ、読み進めたのちに繋がって効果を発揮する特殊ギミック」と解説しましたが、散りばめられるだけ複数あるのが素通りを予防する『布石』と成り得ると思います。
長々語ってきましたが、要点はただ一つ――覚えておいてほしい謎は、早めに開示し、そして複数散りばめたり繰り返し描写したりといった工夫で知っておいてもらう。これに尽きます。
これは余談ですが、創作の参考にまっっっったくならないで界隈に名の知れた怪作……否、鬼作。スーパー戦隊シリーズ第四十六作目『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』を見ていて、筆者は伏線に関して次のように感じました。
――「勘のいい人には伏線はバレる。バレてもいいように、バレたら思った十倍真実のスケールをデカくしろ」
「謎の人物Aの正体は、既出人物Bではないか?」というのが的中したとしても、「既出人物B以外に既出人物CDEも出てくる」となると、真面目な話予想外ですし、そのうえ展開がXYZとなれば、最早本質的な真実は相対的に矮小と化します。
それができたら苦労しないんですけどね…………。
再現可能かは別として、前半で述べた「謎はただ問うものではない」と合わせて、「謎はただ明かすものではない」という論理は、一つ覚えておいて損はないものだと思いました。
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