〇便利な描写3種


 カクヨムに投稿する長編が二本目(きちんとした小説形態であれば一本目)となり、それ以前に二次創作の長編も書いていたのを合わせるとそこそこな本数が積み上がってきました。

 今回は、実際に「多用しているな~」と気づいたもののご紹介となります。多用といっても、ひと作品に二回、多くて三回くらいなら許されるものなので、割合ゆるい判定だと思っていただければ幸いです。


 ――一つ目は『会話や説明は食事中にさせる』です。


 憩いの会話ならばいざ知らず、説明……特に目の前に対象物がある中での説明でない場合、地の文もボディランゲージや表情だけに集約され、あまり映えないのが実情です。そんな中、食事のみならず、なにかしら別の作業を行っているところで説明や会話を平行すると、前述の悩みが軽減されます。

 食事の動き、なにを食べているのか、味に対するリアクションなど、文章が手持ち無沙汰になるのを防げるでしょう。

 そのうえ副産物的ですが、そこで食の好みも判明すれば、登場人物の掘り下げにもなります。食に興味がなくとも問題ありません。『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイが知られた例ですが、彼女の肉食忌避がよく表れた「ニンニクラーメンチャーシュー抜き」は、それだけで個性を表していると言えるのではないでしょうか。「食に興味がない」というのも、立派な個性です。献立から季節性が垣間見えるのも便利だと感じます。

 尚、食事はあくまで筆者の趣味嗜好に寄ったチョイスなので、書き手や作品世界観によっては音楽や煙草もあり得ると思います。


 ――二つ目は『休息段階で買い物をさせる』です。

 一つ目と似通っていますが、こちらは説明のような重要会話がなくともいいのではないかなと。


 余暇、あるいは登場人物同士の親睦を深める場を設ける際に買い物をさせると、休日であればどんな私服を着てくるのか、買いたい好きなものが判明し、更には一つ目の食事も加えられます。登場人物の個性を描写するには、一石二鳥な便利さがメリットと言えるでしょう。

 ただこちらは当然ながらデメリットもあります。休息や余暇と述べたとおり、動ではなく静、能動的ではなく受動的なシーンとなるため、なにかの目的がなければ退屈な中だるみになりかねません。裏を返せば、なにかの目的がある中での交流であれば緩和されるものだとも思います。


 ――最後の三つ目は『無意識的な回想は夢にする』です。

 身も蓋もない!


 とはいえ、身も蓋もないだけで有効性は確かです。「回想はさせたいけれど、覚えていない記憶だったり、未来の展開だったりで、回想では行えない……でも関連性を匂わせつつさせたい……!」といった創作者特有の我が儘を叶えてくれる、かゆいところに届く便利展開です。

 しかしながら利便性は、得てして副作用も孕んでいるものです。他の展開にも言えることですが、多用すればするだけ、既視感により展開が薄っぺらくなっていってしまいます。また伏線とするには露骨すぎるのは否めません。そういう意味でも、一つ目と二つ目より多用しやすく、多用してはならない劇薬でもあります。

 それでも登場人物が一人の時でも回想させられる、登場人物の行動を消費せずに回想させられるといった利点があるため、困った時の頼みの綱として作用してくれるでしょう。


 今回の覚書は比較的役立ちそうな内容ですが、さりとて何度も述べているとおり、多用すると逆によろしくない、諸刃の剣のような側面もあります。

 そういった意味でも実践的な匙加減が試される描写三種だと思います。

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