〇いと高きハードル、その名はタイトル


 二次創作では悩まなかったのに、一次創作になった途端、頭を悩ませるようになりました。


 そう、タイトルです。


 二次創作小説では対象作品というビッグネームがあるため、わざわざキャラクターの属性や物語のジャンルを反映させなければ……と、ない知恵を絞る必要が薄かったことが幸いしてくれました。

 また投稿に利用していたpixivでは、簡易的でも表紙イラストが表示されるので、雰囲気を捉えやすい効果も負担を軽減させてくれていたかもしれません。


 しかし、一次創作ではそうもいきません。特にイラストでアピールを主としていないネット小説においては、タイトルは作品の外見そのもの。カクヨムではキャプション、タグ、キャッチコピーも設定可能ですが、表示によってはタイトルとキャッチコピーのみになることもあります。したがって、タイトルの重要度はグンと上がるでしょう。


 ここで悩みの種となるのが、「やはり可読性と求心力のためにも、流行りの長文タイトルにするべきなのでは?」という命題です。

 「日本語的ではないタイトル、馴染みのない造語のタイトルは読みづらい。ジャンルや内容が分かりづらい」「タイトルはラベリングなのだから分かりやすいに越したことはない」という意見はもっともですし、可能であれば行うべきだとも思います。

 ……可能であれば、です。


 他の創作論であれば、前述の内容を説いていると思いますが、本著において最も大切なのは「モチベーションを保てる」こと。なにより大切なのは「名付けた自分自身が『カッコいい!』と自画自賛できること」です。

 なのでタイトルが既に決まっていれば、それで推し通ってしまって構わないと思います。可読性と求心力を望むのであれば、そもそも可読性と求心力を盛り込むこと、流行を踏まえたうえでの執筆を推奨していたでしょう。


 売り要素をタイトルに盛り込むのは決して悪いことではありませんが、その逆はむしろ危険行為。タイトルに入れたいがゆえに売り要素を無理矢理盛り込もうとするのは、追い風になればいいですが、下手をすれば本著における「モチベーションの維持・向上」を揺るがしかねません。商業化を目指していない作品である以上、流行はあくまで参考程度に留めておいた方が良いと思います。


 そうは言っても、やはりタイトルの命名は迷うもの。

 参考までに、足がかりを三点挙げておきます。


 ――一つ目は「キャラクターのネーミングと同じく、作品の種から作る」です。

 ジャンルやテーマに沿ったり連想したり、あるいはそのまま盛り込んだりして生み出します。『Re:ゼロから始める異世界生活(異世界ファンタジー)』『ソードアート・オンライン(オンラインゲーム)』『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている(青春・ラブコメ)』、『探偵はもう、死んでいる。(探偵)』『りゅうおうのおしごと!(棋士)』『薬屋のひとりごと(薬師)』……など、長さはまちまちですが、キャラクターの役割やジャンル、舞台を盛り込むのは、お手軽に取り入れられる手法です。


 ――二つ目は「定型に沿う」です。一つ目の「作品の種から作る」との合わせ技もできます。

 『ブギーポップは笑わない(名詞+○○ない)』『掟上今日子の備忘録(名詞+事件簿などの記録集を表す語句)』『魔法科高校の劣等生(所属先+劣勢、または相反する称号)』『安達としまむら(名詞A+名詞B)』などはライトノベル・ライト文芸における定型ですが、ジャンル・テーマと同じ先輩作品の傾向に合わせるという手もあります。ゆるやかな日常系作品はひらがなが使われているのは、その分かりやすい類例だと言えます。


 ――三つ目は「タイトルメーカーに頼る」、文明の利器の出番です。

 小説執筆支援サイト『BunCho』では、入力されたキーワードからタイトルを複数自動生成してくれるジェネレーターです。必ずしも綺麗に作られるわけではありませんが、自分の発想では生み出されない言葉も現れたりするので、なかなか侮れません。タイトル生成ボタンを押すごとに結果は変わるため、何度もチャレンジしてみてください。


 かくいう筆者自身も、つい最近まで「可読性があり、求心力のあるタイトルの方がいいのでは?」と本気で改題を思案していましたが、やはり内容と同じく、自分が「これだ!」と決めたタイトルの据わりの良さには敵いませんでした。

 そういう意味で、この章は備忘録というよりは自戒のためにも書き留めておこうと思います。

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