〇性癖、意外と狭まりがち問題


 本編ではなにかにつけて「好きな作品を取り入れる!」「包み隠さず言うなら性癖を取り入れる!」と言ってきましたが、一つ問題があります。


 ――それは、「性癖は収束する」という宿業めいた問題です。


 なんともエセシリアスな字面ですが、実際そうなので笑い事ではありません。要は好きな属性のキャラクターを沢山並べたとしても、系統化してしまえば二人、多くて三人程度にしかならないのです。

 誰しも、覚えがあるのではないでしょうか? 初めて好きになったキャラであっても、よくよく考えてみれば既存の好きなキャラに通じる属性が……なんならこれまでの歴代好きなキャラには共通項が……という、「性癖の収束」を。


 これは由々しき事態です。

 系統化でき、かつそれを把握できれば、設定に取り入れられるいい要素になってくれますが、かえって設定の幅を狭めてしまいかねません。モチベーションを保つための方法が、足枷となりかねないのです。


 この打開策は、大きく分けて三つ考えられます。


 一つ目は「対比で考える」です。

 気高い長髪ツリ目男子が好きで採用したい場合には、それを引き立てる真逆のキャラクター……この場合は卑屈な短髪タレ目男子(女子)となるでしょうか。熱血正義漢に対してクールなライバルは王道の対比関係であり、多々使われている好例でもあるでしょう。

 あるいはドラえもんとのび太くんのように、モブめいたキャラを配置して「なぜ?」「なに?」を投げかける狂言回しにするのもありだと思います。


 二つ目は「グループで考える」です。

 グループというと戦隊ものやアイドルユニットのような大人数になりがちなイメージですが、コンビ単位でも構いません。おねショタ、デコボコバディ、人外×人間などが組み合わせとして好まれているでしょうか。

 あくまでキャラ単体から裾野を広げ、組み合わせによる旨味を発見するのが、この手法における肝です。


 三つ目は「マイナーチェンジする」です。

 「好きなキャラでどうしても書きたい! それ以外は無理!」という時でもなければあまり使わない、諸刃の剣となりかねない手段ではありますが、一つ手として念頭に置いておいても損はないと思います。要は好きなキャラクターの属性から、属性根幹に響かない部分を変更するのです。

 年齢を変える、性別を変える、役職を変える……台詞や描写で書き分けなければならない小説では大変ですが、どう書き分けられるかが鍵になるかと思います。前例二つに比べてあまり使われない手法のように思われるかもしれませんが、こちらは敵キャラにおける造形で用いられている方がよく見かけるかもしれません。

 闇に堕ちてしまった主人公の疑似モデル、あるいは思想のアンチテーゼなど、主人公サイドの味方で書くと大変かもしれませんが、裏を返せば主人公サイドでなければ、それ自体が大きな武器となり得るのです。


 ここまでつらつら書いてきましたが、一番大切なことは「モチベーションを保てる」、書いていて苦にならないことです。絶対に書きたいというキャラクター以外は、それこそプレイしているスマホゲームの好きなユニットを暫定的に当てはめるのも、いい手段だと思います。

 自分自身の好きなものを活かしつつ、うまく書ける境目を模索してみてください。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る