蛇足①

〇ネーミングも種から作る


 折角山あり谷ありのストーリーに自分好みの美男美女を配役したとして、名前が「田中太郎」と「山田花子」で感情移入できる……という人は、あまり多くないのではないでしょうか。こちらはあくまでたとえ話ですが、本題は『登場人物のラベルである名前もまた設定の一部である』ということです。


 かといって、架空の名前をポンポン思いつくかといえば、そうもいかないのが悩ましいところ。ビジュアルは既存キャラからある程度流用が可能ですが、かぶりやすい名前ではそうもいきません。少しもじっただけでは、焼け石に水でしょう。


 こういった悩みは、作品の種となった『ジャンル』と『テーマ』の後者――『テーマ』が解決の糸口となってくれます。


 『アイドル』ならば古今東西のアイドルの名前、『温泉』ならば有名温泉地の名前などが、有効な素材となってくれます。

 分割してメインキャラそれぞれにあてがったり、更に関連する名前をサブキャラや地名にあてがったりと、工夫次第で「あ、これはテーマから考えたネーミングだな」という舞台裏の隠蔽にも繋がります。アナグラムを用いれば更に上手に隠せます。たとえ読者に察されてしまっても、テーマに関連したものであれば、不自然さもさほど生まれません。

 実際の有名どころで言えば、大人気ゲーム『ポケットモンスター』シリーズにおいて、登場人物の名前が植物名からつけられているというのは、よく知られた話でしょう。(最新作未プレイ民なので断言できませんが、今も町の名前は色名からつけられているのでしょうか?)


 自分が納得し名付けたネーミングであれば、感情移入しやすい……前述のたとえ話とは逆の効果が見込めます。またメインキャラとサブキャラ、味方と敵といった関係性も、ネーミングで線引きできます。あえてイメージを固めず書いた方がはかどるという方以外は、有効な方法かと思います。


 ただひとつ問題点があるとすれば、無作為なネーミングとは異なり、選出した『テーマ』によっては枠が狭まってしまう場合もあります。そのうえ世界観によっては、欧風のネーミングに再変換しないといけない手間暇が生まれることもあり、設定の整頓にわずらわされ、書き始めが遅れてやる気の新鮮さを欠いてしまうのも否めません。

 この場合、いっそ「主人公」「ヒロイン」といった記号配置で書き始め、手が空いた時に決めて置換する方法もありますが、どうするとモチベーションが保てるかで決めてしまって構わないとも思います。


 ネーミングも世界観の一部であることに変わりありませんが、モチベーションを保つのがなにより先決であるのをお忘れなきよう……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る