③ー④ 先生からのお願い
「それじゃあ、これで帰りの会を終わりにする。……学級委員の2人には、ちょっとやってほしいことがあるから残っていて欲しい。」
……はぁ。学級委員か〜。なんで俺、ちゃんと話聞いてなかったんだろう。聞いていれば、断れてたかもしれないのに。
外はいまだ、雨が降り続けている。もともとひどかった雨が、さらに強くなり、今はもう、教室の窓を閉め切っていても、雨が地面に打ちつける音が聞こえてきてしまう。
仕事をやっているうちに、雨が降りやめばいいんだけどな〜。
そんなことを考えながら、俺は先生のところへと向かう。
「先生。やって欲しいことってなんですか?……その、雪城さんはまだ友達と話しているようなので、僕が伝えておきますよ?」
なんとしてでも、早く仕事を終えたかった俺は先生にそういう。
……だって、いっつも俺のことを注意してくる雪城さんだよ?さっきは優しかったけど、それがずっと続くなんて保証はないし。
「わかった。じゃあ、先に観音寺に説明しておく。まず、2人にやって欲しいことは、この教室の掃除だ。」
……ん?今、先生『まず』って言った?いや、ちょっとまって⁉︎それは聞いてないよ?仕事、一つじゃないの⁉︎……それに、『まず』って、話が長くなる時に使うことが多い言葉だよね⁉︎いやだよ俺、雪城さんと長い時間一緒にいるのは‼︎……怖いもん‼︎
「次にやってほしいのは、掲示物をこの教室内に張り付けてほしい。」
そう言って、大量の掲示物を渡してきた。……。
「次が最後だ。……最後に、この学級日誌を、雪城と、二人で協力して書いてほしい。……いいか?絶対に、二人で相談して書くんだぞ?」
先生は、俺に向かってそういうと、
「ほら、用事のない生徒たちは、急いで帰れ~‼」
と言いながら、教室から出て行った。
先生が教室からいなくなると、教室内に残っていた生徒たちもだんだんと、家に向かって帰り始め……わずか5分ほどで、教室が、すっからかんになってしまった。
「それじゃあ、ひろき、先生に頼まれたこと、始めましょう。」
……ん?いや~、今日はなんか意味の分からないことがすっごく起こる日だな~。……。
いや、だってあの雪城さんが俺のことを名前で呼ぶなんてありえないでしょ⁉毎日俺のことを怒ってたような人だよ⁉あの人、多分俺のこと嫌いだよ⁉そもそも、雪城さんって、男子とほとんど話さないような人だよ⁉何度でもいうけど、ありえないでしょ⁉
「ひろき、先生から何を頼まれたの?私は聞いていなかったのだけれど。」
「そ、そうだったね。」
雪城さんと、天敵ともいえる女子と二人っきりの教室。教室内の電気はすでに消えているから、入ってくる光は気まぐれに外で光る雷のみ。なんかすっごくやりづらい。……しかもなぜか、名前で呼んでくるし。
「えっと、先生に頼まれたのは、教室の掃除と、掲示物の貼り付けと、あと……その。」
先生から言われた、最後の仕事。俺はそれを言うのをためらった。
別に雪城さんが嫌いなわけではない。いやなわけでもない。……でも、それでもいきなり、二人っきりの教室で、二人でっていうのは、ちょっとハードルが高い。
「あと、あと何なの?ひろき。」
そう言って、雪城さんが俺の顔を覗き込んできたところで、覚悟を決めた。
「二人で、二人で学級日誌を書いてほしいって。」
「そ、そう。」
俺の言葉を聞いた雪城さんは、なぜか顔を赤くしているのだった。
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