③ー⑤ 雪城さんのアレ

「ねえ、日奈ちゃん。雪城さんの、どう思った?」


なずなちゃんが私にそう聞いてきた。


ねえ……。」


きっと、なずなちゃんのとは、雪城さんのあの行動、そしてあの、ひ~くんを見る顔のことを言っているのだろう。


「雪城さんのあの顔、そしてあの行動。……絶対にひろくんのことが好きだよね‼……日奈ちゃんはどう思う?」


「確かに、確かに私も最初はそう思った。……でも何か、何か別の感情が、裏に隠れているような気もしたんだよね。」


その、裏に隠れている感情が何なのか、私にはわからない。でも、雪城さんのあの笑顔の裏に、何かを感じてしまったのだ。


「そっか。……でも、なんにせよ、雪城さんは私たちの恋を、邪魔する存在にはなってきそうじゃない?」


そう、そうなることには間違いないのだ。雪城さんが、ひ~くんにどんな感情を抱いていようと、ひ~くんに対して、何か特別な感情を抱いているのであれば、確実に、わたしたちの恋を邪魔する存在になってくる。


「もし、もしも私の考えが当たってたとしたら、わたしたちって、かなり不利じゃない?……学校でしか、ひろくんと一緒にいることができないし。」


「……雪城さんは、仕事があるとかいえば、わたしたちからひ~くんを、引き離すこともできるしね。それに、そうすればひ〜くんとたくさんの時間を過ごせる。」


そう、それが一番、私は心配なのだ。……だって、ひ〜くんとの時間が確保できなければ、好きになってもらうこともできない。


「まあそもそも、雪城さんは、わたしたちが学校でひろくんにアピールするのを、許してくれなさそうだけど。」


「確かに。」


同じ人を好きになった私たちは、どうやら友達としての相性がいいようで、今まで話したことが一度もなかったのに、もうこんなに話せるようになってしまった。

……私、またひ~くんに助けられちゃったな。


「その、もしよかったらなんだけど、この後二人でご飯食べに行かない?雪城さんの件についても、いろいろ話したいし、それに……日奈ちゃんともっとお話ししたいなって思って。まだ、日奈ちゃんとあまり長い時間話していないけど、ここまで話していて、すっごく楽しかったし。……無理、かな?」


嬉しい‼すっごくうれしい。なずなちゃんにそう思ってもらえるなんて。そんなことを言ってもらえるなんて。


「私も、私もなずなちゃんと一緒に話していて、すっごく楽しい‼……その、私なんかでよければ、なずなちゃんとお話をさせてほしいです。」


そんな話をしながら校門の方へ向かっていると、とある人物を見つけた。

かわいらしい傘をさし、黒い髪をたなびかせ、綺麗な青い瞳で最愛の人を探しているその女の子の名前は、月野瀬優奈。そう、優奈ちゃんだ‼


「あ、優奈ちゃん‼」


私はそんな声を出し、優奈ちゃんの方へ向かって走り出す。水たまりとか、そんなものを気にせず走り出す。……そのせいで、私も、私についてきたなずなちゃんの靴もびちょびちょだ。


「あ、なずな先輩、それに、日奈先輩も。……あの、広葵先輩がどこにいるか、教えてくれませんか?」


優奈ちゃんは、そんなことを聞いてきた。優奈ちゃんの手には、男の子用の傘が握られている。……優奈ちゃん、優しいな。


「ひ、ひ~くんは、委員会の仕事があって……。まだまだ終わりそうにないらしいんだよね。」


「そ、そうなんですか。」


優奈ちゃんは困った顔をしている。


「……そうだ‼優奈ちゃんも一緒に来ない?私と日奈ちゃん、今から一緒にご飯を食べに行くつもりなの。」


なずなちゃんはそう言うと、優奈ちゃんの返事も聞かずに、私と、優奈ちゃんの手を引っ張り走り始めた。

……いま、雨が降っているんですよ⁉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る