③ー① 委員会決め①

「は~い。それじゃあこれから委員会決めを始めるぞ」


担任の柚木先生がそう言いながら入ってくる。俺たちの新しい担任の先生はこの学校で一番(といってもいいほどに)有名な先生だ。噂では、超熱血教師らしい。なんでも、勝負ごとになると、いつもはおろしている髪の毛を、ポニーテールにするとかなんとか。……まあ、そんな先生が、俺たち三人の担任の先生だ。

うちの学校では、各委員会にクラスで男子一人、女子一人ずつ選ばれる。……いや、選ばれるより、選ぶ必要があるといった方が適切か。

まあともかく、男女一人ずつ、選ぶ必要があるのだ。

俺が入ろうとしているのは図書委員会。日奈と同じ委員会だ。


「よし、それじゃあまずは学級委員、学級委員になりたい奴はいるか~?まずは男子の学級委員から選ぶぞ。ちなみに、もし出てこなかったら推薦でえらんでもらうことになるぞ~。」


学級委員か~。うん。まあ関係ないし、ボーっとしておこう。


「う~ん、全然出てこないな~。……よし、誰か学級委員に推薦したい人はいるか~。」


どうせ俺は推薦なんてされないだろうし。

そんなことを考えながら、外を見つめる。さっきまではあんなに晴れていた空は、厚く、灰色の雲に覆われ、校庭には強い雨がひっきりなしに打ち付けられていた。時々ごろごろと、雷が鳴っている。まさに、春の嵐と呼ぶにふさわしい光景だった。


「先生、私は観音寺くんがいいと思います。」


そんなことを言いながら、去年、俺のクラスで学級委員をやっていた、雪城ゆきしろ 奈由奈なゆなさん、通称『規律星人』だ。

『規律星人』

この呼び名は、雪城さんが規律について注意している場面が何度も目撃されたため、この呼び名がついたといわれている。

かくいう俺も、何度も注意されている。というか、俺に対して、すっごく注意してくる。毎日、何か俺のミスを見つけて注意してくる。

……俺、何か嫌われることした⁉

そう思ってしまうほどには。


「……ほう、観音寺か。雪城が推薦するのであれば信用できるだろう。……ほかに意見がなければ、男子の学級委員は観音寺に決定するぞ~。」


うわ~、さっきよりも雨が強くなってるよ~。俺、傘持ってきてないけど大丈夫かな?優奈は、入学式が終わった後、すぐに帰っているはずだし。どうしよう。俺、この雨に濡れながら帰らないといけないのかな~。


「よし、それじゃあ、男子の学級委員は、観音寺で決定だ。」


……ん?ちょっと待って⁉今先生なんて言った⁉

いや、さすがに俺のきき間違えだとは思うんだよ⁉でもね、聞き間違えじゃなければ、俺が学級委員とかいう、意味の分からないことを言っていたような気がするんだよ。うん。

……それにしても、早く図書委員の番が来ないかな~。今年も日奈と、一緒にやりたいんだよな~。

そんなことを考えながら、俺はまた、窓の外へと視線を戻す。

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