②ー⑦ 私だって、負けないんだから‼︎
「せんぱ〜い‼︎ひ〜ろ〜き〜せ〜ん〜ぱ〜い‼︎」
入学式が終わり、教室で休んでいると、大声で俺のことを入り口から呼ぶ幼馴染が現れた。彼女の名前は月野瀬優奈。だらしない俺の面倒を見てくれる、優しくて可愛い後輩だ。……なずなさんに優奈に日奈。俺の周り、可愛い女子が多すぎない⁉︎
そんな可愛い子に囲まれた俺の周りでは今日、意味のわからないことが起こっている。一ヶ月前に、俺のことを振ったはずの女子が、急に『ひろくん』と呼んできたり、気兼ねなく話せる友達が、『ひ〜くん』と呼んできたりと。本当に、本当に意味のわからないことが、突然起きた。……優奈は大丈夫だよね?
不安に思いながらも、あそこで大声で叫ばれるのは迷惑なので、ゆっくりとした足取りで優奈のもとへと向かう。
「優奈、どうしたんだ?」
俺は優奈にそう聞く。すると優奈は、首を三十度くらい右に傾け、右の頬にピンと立てた人差し指を当てると、
「う〜ん……。ひろに会うため?……かな。」
……。え⁉︎今優奈、なんて言った?『ひろ』って言った⁉︎
いや、流石にそれは気のせいか。あの優奈が、急に俺のこと『ひろ』なんて呼ぶはずがないもんね。
「優奈。用があるならいくらでも聞くけど、用がないなら、早く教室に戻って友達を作った方がいいんじゃないか?……二人組作れって言われた時大変なことになるぞ?」
そう、去年の日奈のように。
「もう‼︎ひろくんったら何言ってるの⁉︎私のことは、ゆ〜なって呼んでって言ったじゃん‼︎なに?優奈って。優奈じゃなくてゆ〜な‼︎ゆ〜なって呼ぶの‼︎」
……。あ、これやっぱり、優奈、俺のこと『ひろ』って呼んでるわ。しかも俺に『ゆ〜な』って呼べって。
いや、正直言って変わらなくない⁉︎『優奈』も『ゆ〜な』も。真ん中を伸ばすか伸ばさないかな差じゃん⁉︎
そう言いたいところだが、優奈にもこだわりがあるのだろう。仕方ない、『ゆ〜な』と呼ぶか。
……え⁉︎この状況に驚かないのかって?
いや、さすがに同じような出来事が1日に何回も続いたら、さすがに驚かないでしょ?もう慣れたよ。こういう出来事に。うん。
「それじゃあひろ、私、もうそろそろ行かなきゃだから。……バイバイ‼︎」
体をくるっと180度回転させ、優奈は顔だけを俺の方に向ける。
……振り向き美人って、今まで理解できなかったけど、今初めて理解できた。
振り向き美人って、めっちゃ可愛い。優奈が首を少し傾けてるのも、あって、すっごく可愛い。もう神、天使。
なずなという心に決めた人がいる俺でもそう思ってしまうくらい、優奈は可愛かった。
「ゆ〜な。またあとで。」
そんな可愛い優奈に向かって、俺はそういうのだった。
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