第45話 アーチャーVSガンナー

「ほう、お前は丘のライダーか。生憎俺は海のライダーでな、自慢の海賊船が使えねぇんだわ」

「だから手を抜いて欲しいのかしら?」


 ゼノビアの戦車がUターン。再度ドレイクに襲い掛かる。


「はっ、女に心配されるほど落ちちゃいねぇよ。丘の海賊ナメるなよ!」


 ドレイクは跳躍、御者台の上のゼノビアに斬りかかり、ゼノビアは黄金の剣を召喚し、見事に打ち払った。


 ドレイクは落下して地面に転がりながら受け身を取る。


 知勇兼備の美女王ゼノビア。彼女に死角は無い。


   ◆


 そしてカラミティVSロビンのシューター対決。


 銃VS弓は一見銃が有利なようで、だが超人ベルセルク同士の戦いでは必ずしもそうとは言えない。


 ロビンは、カラミティの放つ二丁拳銃を立てつづけにかわし、矢を同時に二本も三本もつがえて放った。


 その軌道は丸い弾丸と違い正確無比。かつ文字通り弓なりの軌道をつけたり、速度も弦の引き具合で変幻自在。


 最初は自信たっぷりのカラミティだったがこれがなかなかどうして、ロビンは間違いなく強敵だった。


「そんな古くせえ武器でよくやるじゃねぇか」

「君も、そんな単純な武器でよくやるじゃないか」

「ファック! その口すぐにきけなくしてやるよ!」

「私は君の心臓を射ぬこう!」


 二人は森の中を駆けまわり、跳び、転がり、あらゆる態勢から相手に向かって射撃合う。


   ◆


 直隆の忠勝の戦いを、エイルは目を見開いて固まった。


 エイルの目は釘づけられる……その戦いの凄絶さに。


「「雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄‼‼‼」」


 神速の剣撃と槍撃が乱舞し猛り狂う。


 二人の闘争は百花繚乱の狂い咲き。


 鋼と鋼が、何千何万という無限の衝突を繰り返して、その数だけ衝撃波で草木が悲鳴をあげる。


 大地をえぐる足捌き、空気を胎動させる体捌き。


 重力と遠心力を支配した斬撃を、神速の瞬発力と巌の剛力で放ち合う。


 物理法則を無視したような動きで殺し合う両雄。


 全身を形作る六〇兆の全細胞が、ただ他を殺さんと咆哮する。


「なん……なのよこいつら……」


 人智を超えた身体能力。

 激怒したドラゴンがトカゲに見える威圧感。

 まるで三六〇度の視界に加えて戦場を俯瞰から見ているのではと思うような攻防。


「あたしが三人いても勝てる気がしない……」


 神に仕える存在は東西に存在する。


 アジアの天女は術師系で、中東西洋の天使は階級によって術師系だったり戦士系だったりする。


 そして北欧の戦乙女ヴァルキリーは完全な戦士系。戦乙女の名の通り、全員生まれながら高い身体能力と戦闘センスを持ち、剣と盾を手に敵と戦う生まれながらの戦士だ。


 だが直隆と忠勝は、人の身ありながら明らかにヴァルキリーを超える力を持っている。


 才能はあっただろう。


 良き敵、良き戦場に恵まれただろう。


 それでも、人間と言う生物に許された力を明らかに超えている。


 どのような人生を送れば。

 どれほど自分をいじめ抜けば。

 こうも不自然な力を手に入れられるのか。


「流石だな真柄直隆。その膂力、速さ、技量、気迫、全てがこのヴァルハラの最高水準を超えている……だが貴様には……」


 忠勝の剛撃が襲い掛かる。


「忠義が足りない!」


 神がかった突きの一撃は、直隆の右肩鎧を切り飛ばした。


「っっ!?」


 忠勝の連続突きを、直隆は全て鎧で受け流す。

 なのにその一撃一撃は直隆の鎧を破壊する。

受け流しただけで鎧を削り取る破壊の突きを防ぎ切り、直隆は袈裟斬りの一撃を見舞った。


「真柄直隆、貴様」


 忠勝は長槍・蜻蛉切りを操り、直隆の刀を受け流し、間髪いれずに直隆の胸板を切り裂いた。


「がはっ」

「あの頃よりも弱くなったな」


 血を吐きたたらを踏む直隆を、忠勝は冷厳な瞳で見下ろした。

  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る