第43話 カーバンクル狩り
直隆の言葉から一〇分後。
茂みの中に隠れる直隆達の視線の先には、直隆が植物のツルと木の実で作った狩猟用の罠が仕掛けられていた。
単純だが、カーバンクルが木の実を食べようと近づき、ピンと張られたツルに触れると対象の体をツルが縛り上げるという物だ。
エイルは思わず感心してしまう。
「あんたよくこんなの知ってたわねぇ」
「戦場じゃ食糧補給の為に武士でも狩りしたりするんでな、おっ、来たぞ」
一匹のカーバンクルが木から降りて来て、ぴょこぴょこと木の実に近寄る。そのままツルに触れて、別のツルが一気に跳ね上がりカーバンクルを縛りあげようとする。
「よしっ」
刹那、カーバンクルは反射的に真上に跳躍。罠から逃げ出し、木の枝に飛び移った。
茂みに隠れていた直隆達を見下ろして、ぷいっと方向転換、カラミティが立ち上がる。
「やべぇ逃げるぞ!」
カラミティが発砲。引き金を引きまくって、カーバンクルは驚き逃げる。
「だから殺しちゃダメだって!」
「当てやしねぇよ! 枝を落とすだけだ!」
だがカーバンクルの俊敏さは異常だった。
速くて早い。
直隆達は全力疾走でカーバンクルを追いかける。
しかしカーバンクルは枝から枝へ、木から木へと飛び移り、カラミティの弾丸で枝が落とされても気にしない。
「このやろっ!」
カラミティの弾丸が枝を撃ち抜く。
カーバンクルの足場が落ちて、落ちるその枝から跳躍して次の枝へ、その枝を先に撃ち落としても枝は無数にある。
延長上、跳躍上にある別の枝に飛び乗ればそれで住む。
いかにカラミティと言えど、木の枝全てを一度に落とす事は不可能だ。
直隆が走りながらゼノビアを向く。
「おいゼノビア、なんか策は無いのか? お前頭いいんだろ?」
「わかりましたわ、じゃあカーバンクルを捕まえられたらキスして差し上げますから頑張ってくださいな」
「それ策じゃねぇだろ!」
「え? でもパルミラ軍はいつもワタクシのセクシーボイスで鼓舞すれば士気MAXでしたわよ?」
「パルミラ軍安っす!?」
「直隆、貴方失礼ですわよ!」
「そんなのいいからてめぇらも手伝いやがれ!」
弾込めをしながらカラミティが柳眉を上げた。
「でもワタクシの遠距離は弓矢しか……」
「あーちくしょう、あんな小動物に馬鹿にされてたまる……あー」
直隆がニヤリと笑う。
「なんだよ、あるじゃねぇかよ。あのウサギ野郎を捕まえる簡単な方法がよう」
「何かあるの?」
「考えてもみろよエイル。俺らは走ってあいつに追い付ける、つまり速さは負けてないんだよ。負けてるのは機敏さ、だから逃げ場を奪おうとしてんだろ?」
「でもカティとゼノビアの射撃じゃ枝を全部落とすなんて」
直隆が加速。
エイル達を置いてけぼりにして先行し大刀・太郎太刀を召喚した。
「だったらよ。枝なんてケチくさいこと言わずに……」
直隆が大刀を水平に、そして真後ろに引いて構える。
「全部落とそうぜ! どおおおりゃあああああああああ!」
カーバンクルが次に跳び移る木を、直隆の豪刀がたたった斬る。
巨大な刀身が、質量と筋力と瞬発力、そして遠心力を加えて大木を薙ぎ倒し、カーバンクルは枝どころか、飛び移る木、そのものを失った。
「みゅっ!?」
さらに次の木の幹に跳び移る事はできるだろうが、そこには直隆の手が待っていた。
「つーかまーえたっと」
カーバンクルは、直隆にくびねっこをつかまれてうなだれた。
「でかしたわ直隆」
「これでいんだろ? 縛るツル持ってきてくれ」
カラミテイィがツルを持ってきて、カーバンクルを縛り始める。
するとゼノビアがすすっと直隆にすり寄った。
「流石ですわ直隆、では約束通り、あむ」
有無を言わさず、ゼノビアが直隆の口を塞いだ。
「あああああああああ!」
「~~~~~~!?」
エイルが悲鳴を上げる。
直隆が口の中を征服される。
ゼノビアの舌が情熱的に直隆の舌に絡み、歯ぐきをなめ、ついには直隆の舌を吸いだし甘噛みを始めた。
「プハっ。テイスティング完了ですわ」
「おいゼノビアお前、いきなり」
「あたしの直隆が犯されたぁああああああ!」
エイルが涙ながらに悲鳴を上げて駆け寄って来る。
「いつ俺がお前のになったんだよ!」
「あんたは黙ってなさい! ちょっとゼノビア! 直隆はあたしの奴隷なんだからね! ご主人様の許可も取らずに――んむっ!」
ゼノビアの口が、エイルの口を塞いで直隆にしたのと同じ事をする。
エイルの顔が首筋から耳まで赤く染まって、頭から湯気を出した。
「あふん……」
口を解放してもらうと、エイルは脱力して後ろに倒れる。
「安心しなさいエイル。貴女もワタクシの可愛い家臣。心配しなくてもワタクシの寵愛を受けさせてあげますわ」
言いながら、両手をわきわき動かしエイルの巨乳に近づくゼノビア。
その姿は三六〇度どこから見ても変態王だった。
「おい、このリスウサギ縛ったからもう行こうぜ」
カラミティが、距離を置いてそう言った。
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