第42話 何故、銀のリンゴ?
「ねぇエイル。どうしてターゲットがダイヤ付き銀リンゴなのかしら?」
「え? なんでって、そりゃ宝箱に入れるお宝だし」
「じゃあ金のリンゴにすればいいじゃない。あれはギリシャ神話のヘスペリデスの園にある不老の妙薬たる黄金のリンゴとは違う、本当に貴金属の銀で作られたリンゴにダイヤモンドをはめこんだものよ。でも、お宝っていうなら金やプラチナで作ればいいじゃない。なのにどうして銀なんていう中途半端なもので作ったのかしら?」
「えっと、予算の都合じゃない?」
「ヴァルバト興行を始めてから、アースガルズはエルドラドや高天原に負けない超経済大国ですのよ。まして世界中の神々が観戦にくるこの一大イベント、地上のオリンピックをも超えるこのフェスタで予算なんてけちるかしら? 見た目の派手さなら金やプラチナで作ったサファイアやルビーを沢山つけて飾り立てればいい、予算は湯水の如くあるはず。なのにこの競技ではあえて純銀製のリンゴにダイヤモンドを一つはめこんだだけのリンゴをトレジャーのターゲットにしているのです。ワタクシは、これに主催者側のメッセージを感じますわ」
エイルが納得しそうになって困惑する。
「でで、でもターゲットが銀だからどうだっていうの? メッセージって、ただのゼノビアの深読みじゃ」
「狙いは宝箱ではなく、ダイヤ付き銀リンゴ。この森にはダイヤ付きリンゴを探すヒントがあるはずです」
直隆が唸る。
「ん~、ヒントって言っても、どこ見ても草木しかないぞ。それに宝箱だろうが銀リンゴだろうが俺らに探索スキルは」
「我々になければ、他人に探させればよいのですわ」
「他人?」
カラミティが首を傾げて、エイルがぽんと手を叩く。
「カーバンクルね!」
直隆が怪訝そうな顔をする。
「カーバンクル? なんだそりゃ?」
「ほら、この森にリスかウサギかよくわからない小動物いたじゃない?」
「あー、あれか」
「あれはカーバンクルって言って、本来なら南米のモンスターなのよ。でもこの森には、そのカーバンクルが妙に多いわ」
「やっぱりそうでしたのね」
ゼノビアは得心を得て頷く。
「先程、木の上の宝箱のすぐ近くにあの小動物がいましたわ」
「ええ、あのね直隆。カーバンクルの行く先には宝石があるって言われているの。でもそれは、宝石の鉱脈の近くに住んでいるって意味じゃなくて、カーバンクルは宝石の匂いが解るって意味なのかも」
「話が見えて来たぜ」
カラミティが拳銃を構える。
「ようするに、そのリスもどきをとっ捕まえてお宝のところまで案内させればいいんだろ?」
「そうだけど、殺しちゃだめよ」
エイルがジト目で見ると、カラミティは舌打ちをした。
その時、頭上から可愛らしい泣き声が聞こえた。
見上げれば、枝の上にリスともウサギともつかない小動物がこちらを見下ろしている。
でも目が合うとすぐに逃亡、カーバンクルは見えなくなってしまう。
「よし、罠でも張るか」
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