第38話 ルパンの横やり
昌景が大木に背中から衝突。
スイレーが驚愕の悲鳴を上げた。
真柄直隆。彼は身の丈程の大刀が武器でありながら、パワー、スピード、テクニック、全てがそろった万能のパーフェクトファイターなのだ。
重たい超重量の大刀を軽々と力強く、かつ巧みに超高速で手足の延長として操る彼だからこそ、戦国最強本多忠勝と渡り合えた。
「その調子よ直隆♪ がんがんいっちゃいなさい♪」
エイルの声援を無視して、
――さて、俺はいいけど、あっちはちょいと厳しいか。
直隆が視線を逸らした先、信春は戦車の上から射るゼノビアの矢と、正面から二丁拳銃を撃つカラミティの弾丸を全て防ぎ切り、余裕の笑みを浮かべている。
でも春信も攻撃してこない。
――完全防御型。防御は良くても攻撃に自信がないのか?
ゼノビアとカラミティが疲れてから仕留める気だろうか、と直隆は考え、昌景を早く倒して加勢しようと決める。
「これでっ! 終わらせる!」
真柄直隆VS山県昌景その決着が付く瞬間だった。
木に叩きつけられた昌景もすでに態勢を立て直し、攻撃姿勢に入っている。
「久しぶりに強敵と会えたぜ真柄直隆。俺も、これで終わらせてや」
「「あああああああああああああ!」」
エイルとスイレー、二人の悲鳴に誰もが注目する。
彼女達が見上げる先、木の上では目にモノクル、頭にシルクハットを被った黒づくめで細身の男性が宝箱から銀のリンゴを取り出していた。
線の細い美系で、人懐っこい笑みを浮かべている。
「お初にお目にかかりますムッシュ、マドモアゼル。私の名前はアルセーヌ・ルパンです。では、ごきげんよう」
素敵な笑顔と投げキッスを、エイルとスイレーの二人に残して怪盗は去る。
漁夫の利。
日本のことわざを思い出しながらエイルは叫んだ。
「もっていかれたぁあああああああああああ!」
スイレーも横で、へなへなと力無く地面におしりをつける。
「こ、この私がこんな手に……」
互いのベルセルク達もなんだか冷めてしまい、戦闘は一時中断だ。
同じ気持ちを共有するエイルとスイレーはそれぞれ。
「エイル、ここで別れない?」
「そうね、さっさと他の宝箱探すほうが賢明だわ」
「はいはい、じゃあそういうわけだから、行くわよ」
スイレーは倒れた高坂昌信と内藤昌豊の肉体を、ベルセルク保護魔法で宙に浮かびあがらせると、山県昌景と馬場晴信に命令を下す。
二人は納得のいかない顔だったが、
「姫様がそう言うなら」
「まぁ、競技を考えるとそっちのほうが賢い、ですよねぇ、ではお嬢さん方、また今度」
互いに不完全燃焼のまま戦闘終了。
後に残された直隆達も、本当の本当に、なんとも言えない、微妙な、物凄く不完全燃焼な顔をする。
特にカラミティは、
「ファック! あんのクソシルクハット!」
と叫びながら空に向かって拳銃をぶっ放しまくった。
ゼノビアも戦車の上で地団太を踏む。
「このワタクシの獲物を横取りするなんて、万死に値しますわ!」
最後に直隆が、
「そんな事してる暇あったら次の探そうぜ」
「「「わかってるわよ!」」」
女三人に怒鳴られて一言。
「めんどくせ……」
電撃オンラインでインタビューを載せてもらいました。
https://dengekionline.com/articles/127533/
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