第37話 真柄直隆VS武田四天王

 ゼノビアが、


「エイル、このヴァルキリーは誰ですの?」


「そういえばゼノビアとカティは知らないっけ? あたしの同期でいつも成績争いしていた奴よ。あたしはパパに頼らず自分でベルセルク探したのに、こいつはフリスト少尉の娘でしかも父親があの武田信玄だから、武田二十四将からいつも引っ張ってくる七光野郎よ!」


「だってパパとママが貸してくれるって言うもの。今回はフリストママもこのフェスタに参加しているけど、信玄パパはママが使うかわりに四天王は私にゆずってくれたわ」


 直隆の眉が、ぴくりと動いた。


「武田四天王。へぇ、じゃあそいつらが馬場信春。内藤昌豊。山県昌景。高坂昌信か」


 愛大刀、太郎太刀を構える。


「一度戦ってみたいと思ってたぜ」


 武田四天王と、朝倉家最強真柄直隆が睨み合う。

 合わせて、カラミティも両手に拳銃を握り、決闘前の緊張感に高揚する。

 直隆が大刀を振りあげた。


「いくぜ!」

「平伏しなさい!」


 真横から、戦車に乗ったゼノビアが突貫。


 敵武田四天王のうち内藤昌豊と高坂昌信が馬の蹄に蹴られ踏みつけられ、トドメとばかりに戦車の車輪に巻き込まれて血を吐いた。


 突然の出来事に、直隆とカラミティはバックステップで退避。


 ここは森の中でも開けた場所だが、だからと言って戦車により突貫をするには手狭だ。


 でもゼノビアは躊躇わない。


 武士同士の決闘に横槍を入れるのもなんのその、見事な蹂躙制覇で一度に二人のベルセルクを倒してしまった。


「よし今だぜ!」


 カラミティが駄目押しとばかりに倒れる内藤と高坂に連続射撃。

 銃弾を一発撃ち込むごとに二人の体はびくんびくんと跳ねて、やがて動かなくなった。


「ふー」

「いや、ふー、じゃねえだろ! お前倒れた相手に卑怯過ぎるだろ!」


 直隆のツッコミに、カラミティは唇を尖らせる。


「えー、なんだよ直隆。殺せる奴は殺せるうちにとりあえず殺しといたほうがあとあと有利じゃんかよぉ」


 両手のリボルバーに弾を込めながら文句を言うカラミティ。


「だからさっさと殺っちまおうぜ!」


 ゼノビアの攻撃から逃れた敵二人の内、馬場信春へまた射撃をしかける。

 だが放たれた弾丸は全て刀の刃で弾かれ、明後日の方向へ飛んでしまう。


「何!?」


 その男、馬場信春は笑う。


「すいませんねぇ。私は本多忠勝同様生涯無傷の男、馬場信春。生涯七〇度の戦に出て傷を負った事などありませんよ」


 信春の手元で、刀身が太陽光を反射してギラリと光る。


「私の鉄壁の防御、破れるものなら破って下さい、な! っと」


 信春がカラミティにスリ足で駆け寄る。


「ちぃっ!」


 すかさずカラミティは反撃。

 だが信春は全ての弾丸を最小限の動きでかわし、受け流し、弾いてしまう。

 その足捌き体捌きは華麗にして流麗。

 鉄壁の防御とはこの事である。


「防御特化型かよ、ムカつくんだよそういうのはよお!」

「無駄ですよ」


 銃VS刀で互角。

 ベルセルク同士の戦いでは珍しくないが、それでも真正面から撃たれてここまで完全に防ぎきる春信の実力は本物だ。


「じゃあ俺もやるぜえ! 武田四天王山県昌景! 参る!」


 武将にしてはひと際小柄で、エイルよりも小さい男が刀を構える。

 対して、直隆は決して油断する事なく、大刀を上段に構えた。


「真柄直隆、参る!」


 直隆と昌景。

 二人の雄が咆哮を上げて衝突。


 筋力は当然直隆が上、が、昌景は卓越した瞬発力と巧みな剣捌きで直隆と打ち合う。


 二人の凄烈な戦いの余波で、周囲の草が薙ぎ払われる。

 身の丈ほどの大刀を持った巨人と戦う小人。


 神話の一ページのような光景。


 エイルは知らないが、日本の牛若丸VS弁慶の戦いはきっと、こんな感じだったのだろう。


 もっとも、その時とは違い、こちらは互角、否、大柄な直隆が押している。


 武器を持った戦いにおいて、体格差は関係無い。


 それは剣道や薙刀の試合が体重制を採用していないところからも明らかだ。


 体格が違うのは、ただ武器が違うだけ、パワータイプとスピードタイプが戦い、パワータイプが有利とは決まっていない。

 昌景は困惑した。


「お前、俺の速さに……」

「悪いな、生憎俺はパワータイプって奴じゃないんだ。俺は大刀使いの」


 直隆が放つ神速の閃きが、昌景を弾き飛ばした。


「ぐはっ!」


「万能型様だよ! デカ武器がみんな筋力頼みだと思うなよ」


 昌景が大木に背中から衝突。

 スイレーが驚愕の悲鳴を上げた。

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