第35話 ちょっとあたしがバカみたいじゃない!


「よし、やっととうちゃ」


 森へ入ってしばらくすると、エイルが乗っていた馬車が突然雲散霧消。

 直隆達は跳んで森に着地するが、エイルは勢い余って地面に顔面ダイブ。

 顔で地面にわだちを残しながらようやく止まった。

 ひっくり返っているものだから、スカートがめくれてパンツが丸出しだ。


「何すんのよゼノビア!」


 土だらけの顔を上げて抗議するエイル。

 だがゼノビアはどこふく風だ。


「だって狭い森の中で戦車は走りにくいもの」

「ていうか森の中で馬は危ないぞ。馬が転んで落馬したらどうするんだよ?」

「何よ何よ、直隆までゼノビアの味方する気!? カティはあたしの気持ち解るでしょ?」

「え? いや、あたしは森の中を走った事ないけど、地形考えたら馬はまずいよなって普通に思ってたぞ?」


 カラミティがアゴに指先を当てて、エイルが両目を釣り上げた。


「それじゃあたしがバカみたいじゃない!」

「「「うん」」」


 直隆、ゼノビア、カラミティがまとめて首肯した。


「うわーん、みんなのバカぁ! だから人間は嫌いなんだぁ!」


 遠ざかって行くエイルの背中を見て、直隆達はやれやれ、とばかりに追いかけた。


「痛っ」


 エイルはすぐに転んで、またパンツ丸出しで顔を抑えた。


「お前何やってんだよ」

「何って、なんかに転んで」


 エイルは起き上がり、目を丸くした。


「あ、これ宝箱じゃない、ラッキー♪」


 見れば、それは下半分が地面に埋まった宝箱で、上に草が被せられている。

 でもエイルが上機嫌で開けると期待は裏切られる。

 ようするに、空っぽだった。


「多分、戦闘機組だろうな」

「あいつらとんでもなく速いからなぁ」


 直隆とカラミティに続き、ゼノビアも溜息をつく。


「早くしませんと、安全な宝箱は全て取られてしまいますわね」


 エイルが歯を食いしばる。


「むぅ、みんな、早く次の宝箱を探すわよ! あたしについてきなさい!」

「へいへいっと」


 直隆は重い足取りでエイルについていく。

 なんだかんだで、しっかりヴァルバトに参加してしまっている自分。

 本当にこれでいいのだろうか、と直隆は悩んだ。

   

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