第34話 ライダー大戦


 その頃地上では、


「じゃあエイル。お姉ちゃん達先に行ってるからね」


 ジュウイチの乗るガトリングバギーの助手席で、エイルの姉アイルが笑顔で手を振って来る。


「ガガ、ガトリングバギー!?」


 驚くエイルにジュウイチが、


「ああ、俺使った事のある軍用物資は全部装備品扱いになるみたいでさ。アイル、ちょっと運転代わってくれないか。アクセル踏んだままハンドル握ってればそれでいいから」

「うん♪」


 アイルを運転席に座らせて、ジュウイチは機銃を握った。


「んじゃあちょっと……どいてもらうぜ!」


 ガトリング砲が回転、毎分四千発の弾丸を拡散しながら周囲にバラまかれ、ジュウイチ自身もガトリングを右往左往させて前方のベルセルク達を蹴散らした。


 馬の尻とベルセルクの背中を無残に撃ち散らして、一部の英雄はガトリング砲をかわしたり、剣や槍で弾丸を弾き切る。


「へぇ、やっぱり昔の戦士は強いな」

「って、あんた卑怯過ぎるでしょ!?」


 怒鳴るエイル。でもジュウイチは悪びれる様子が無い。


「俺は武士でも騎士でも格闘家でも無く兵士だからな。使えるものは何でも使うし、どんな手段を使ってでも国際法に反しなければOKだと思ってるぞ」

「え~」

「大丈夫大丈夫。いくら現代の英霊って言ってもレーザー砲とかガンダムとか宇宙戦艦なんて出せないから、じゃ」


 ジュウイチが再び運転席に座ると、ガトリングバギーは徐々に遠ざかって行く。

 エイルが回りを見ると、馬に乗る武将や騎士達の中で先行するのは、やはり馬が有名な英傑達だ。

 正直に言えば、エイル達は少し遅れている。


「う~、先頭グループには追い付けないかぁ」

「おいゼノビア、お前の戦車でもっとスピード出るのあるか?」

「こう敵が多いと、四頭立ては馬が狙われやすいですし……始まりましたわね」


 見れば、周囲の武将達が馬に乗ったまま争っている。


 強いのはやはり日本の武将達だ。


 海外は左手で手綱を持ち、右手で得物を持つ為、片手で戦う事になる。


 だが日本の武将は足だけで馬を操り、両手で弓や槍を持って戦う為、馬上の戦いでは敵なしだ。


「はーっはっはっはっ! 天下無双の傾奇者! 前田慶次参上!」


 巨大な馬に乗り、ド派手な格好をした武将が、朱槍を振るい、前のベルセルク達を次々蹴散らし通り過ぎて行く。


「うわっ、あれってブリュンヒルデ少将の前田慶次じゃない!」


 エイルが悲鳴を上げて、直隆は冷静に分析する。


「なるほど、戦国最速の馬、松風を持っている前田慶次ならレースには最適だ。いいベルセルク持ってるな」

「って、感心している場合じゃないでしょ! カティ! 前の奴全員撃ち殺していいわよ!」

「OK!」


 久しぶりにメイド服を脱ぎ、西部ガンマンスタイルのカラミティは手綱から右手を離すと、腰の拳銃を抜き構える。


「喰らいな!」


 立てつづけに六度引き金を引き、前方のベルセルクを射撃する。

 だがその時、背後から一本の矢が飛来、カティの背中に向かうソレを直隆が大刀で払った。


「狙われているのは俺らも同じだ。油断すんなよ」

「おう、悪いな」

「ふむ、直隆」

「なんだゼノビア?」

「貴方が馬を守りなさい」


 言うやいなや、ゼノビアは四頭の馬に引かせた四頭立ての戦車を召喚。

 そちらに飛び乗りさっきまでの馬を雲散霧消させて弓矢を召喚する。


「全員こちらに移ってください」


 言われた通り、それぞれの馬をしまい、直隆とカラミティも戦車の御者台へと飛び乗った。


 ゼノビアは回りのベルセルク達を次々弓で射ぬきながら、


「ワタクシとカティは攻撃を、直隆は大刀で馬を守り、エイルは手綱をお願い致します。ヴァルキリーは戦闘さえしなければ良いのでしょう?」

「え、ええそうね、解ったわ」


 ゼノビアの指示通り、ゼノビアとカラミティは射撃要員、シューターとして回りの敵を攻撃。


 直隆は戦車の馬に矢が飛んでくると大刀でそれを弾き、エイルは手綱を握り、戦車がまっすぐ森へ向かうよう誘導した。


「イケるわ。みんな、このまま森へ一直線よ!」


 エイルは手綱で馬達にムチを入れ、森へ向かった。

  

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