第22話 戦国最強本田忠勝
「忠勝!?」
直隆、ゼノビア、カラミティ、そしてすっかりメイド服姿にされたエイルがいるリビングへ通された忠勝。
宿敵を前に直隆は声を上げ、戦国最強の男を前にエイルは、
「あ、忠勝久しぶり」
「むっ、エイルか、なにゆえメイドの格好を?」
「うぇっ!? え、えーとこれは、まぁいろいろあって」
「そうか、それならいい。本日はそこの直隆に用があって来た」
忠勝はパッと見二〇代前半、直隆やジュウイチよりも背が高い。
手足が長い為、あまりゴツイ印象は受けないが、発達した筋肉が着物の上からでも確認できる。
凛々しくて、かなり整った顔立ちだ。
一目でもののふ特有の力強さを感じるが、決して剥き出しの野性身を持つわけではない、むしろ自分を完全に律している賢人のような気品さえ感じる。
「今更何の用だよ忠勝。前に会った時は逃げたくせに」
直隆はつまらなさそうな顔で忠勝を見てから、視線を逸らした。
「前にお前と会った時、俺は忠義無き貴様では俺の宿敵足り得ないと言った。だがギルドに加入したという噂を聞いてな、だが」
忠勝は、直隆をためつすがめつ観察して、自身のあごに指を添える。
「ふん、魅力がないな。なるほど、詳しい事情は知らないが、形だけの主従のようだな。それではまだ俺の宿敵足り得ん。秀吉公の為に戦う猛将加藤清正のほうがよっぽど魅力的だったぞ」
「んだと!」
忠勝にくってかかる直隆。
忠勝は力強い眼光で直隆を押し返す。
「っっ」
負けじと睨み返す直隆。でも忠勝はなんでもないという風にこう返す。
「真の忠義を得た時、お前は俺の宿敵足り得る。お前はそれだけの逸材だ。フェスタまでに思い出せ。あの、姉川の戦いをな」
◆
「ふーん、じゃあ直隆ってあの忠勝と戦った事あるんだ」
「ああ、お前、忠勝と知り合いなのか?」
「忠勝はグレイズ先輩のベルセルクなの、グレイズ先輩はすっごく綺麗で優しい良い先輩なんだから」
忠勝が帰った後、メイド服を脱いだエイル、直隆、ゼノビア、カラミティの四人はヴァルバト協会へと足を運んでいた。
ロビーから大会受付へ向かって歩く。
周囲には同じヴァルキリーと、数えきれない程の英霊達が行き交っている。
「おや、これはエイルちゃん」
「げっ、聖徳太子」
烏帽子をかぶり、杓杖を持った、美系のお兄さんが歩いてきて、エイルはあからさまにいやそうな顔をする。
「こいつ人間のくせに神位持ちだから苦手なのよねぇ」
「今日はどうしたんだい? フェスタの申請?」
「え、ええまぁ、そうなのよ、ですぅ」
無理のある敬語で苦笑いを浮かべるエイル。
直隆は残念なものを見る目をした。
「それで、ヴァルハラ日本区知事卑弥呼の補佐官がなんでこんなところにいるんだよ?」
「ああ直隆。二週間後のフェスタの仕事でね、しばらくは協会務めだよ。それよりエイルちゃん、お父上は元気かい?」
途端に、エイルはバツの悪い顔をする。
「いや、パパとは最近会ってないから」
「ふーんそうか」
その時、周囲のヴァルキリー達の注目が集まる。
「ねぇねぇ、あれって聖徳太子じゃない?」
「あ、ほんとだ、近くにいるあいつ誰?」
「あれエイルよ、ほらギルドマスターの恥じ晒し」
「あー、あのゼロ野郎」
「でもまわりに三人いるけど、へぇ、やっとベルセルク手に入れたんだ」
周りの雑音に、エイルは下唇を噛んだ。
「じゃ、じゃああたし達はこれで、行きましょみんな」
エイルは直隆の袖をつかみ、受付のほうへ引いて歩く。
その時の顔がちょっと泣きそうに見えて、直隆はなんだかいい気分がしなかった。
直隆にヴァルキリー達の価値観は知らないが、とりあえず自分のギルドマスターは周囲から見下されているのだということだけは解る。
「おい、エイル、お前」
「なおたかぁあああああああ❤」
隕石が衝突。
ではなく、突然一人の女性がアメフトタックルで直隆に突撃してきたのだ。
「ごぶほぉおお!」
「フ、フレイヤ様!?」
エイルは一瞬で姿勢を正し、かちこちに固まってしまう。
「ふふ、直隆聞いたわよ、貴女ベルセルクになったんですってね。私をソデにしたあげく誰のものにもならずにいたと思ったら、どういう風のふきまわしかしら?」
直隆に馬乗りになって、その女性は怖い程色気に満ちた視線で直隆を見下ろす。
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