第23話 エロ女神フレイヤ

「ふふ、直隆聞いたわよ、貴女ベルセルクになったんですってね。私をソデにしたあげく誰のものにもならずにいたと思ったら、どういう風のふきまわしかしら?」


 直隆に馬乗りになって、その女性は怖い程色気に満ちた視線で直隆を見下ろす。


 女神フレイヤ。


 全ヴァルキリーを束ねる、ある意味ヴァルキリーの神とも言えるアース神族最強の女神である。


 ヴァルハラに来た英霊は、まず彼女の館に行って、それから、


「直隆、今夜は私の館に来なさい。ジュウイチに逃げられて今、すっごく機嫌が悪いの」


 腰まで伸びた金髪に飾られた、絶世の美貌が直隆を射ぬく。


 直隆は、セックスシンボルという単語が擬人化したような、極端に肉感的なグラマラスボディの下敷きにされてしまう。


 並の男ならば、これだけでフレイヤの性奴隷にされてしまうが、直隆はブリッジでフレイヤを跳ねのけた。


「ぁん❤」

「そういう事なら自分のベルセルクに頼めよ」


 カラミティが頭上に疑問符を浮かべて、ゼノビアを見上げる。


「ゼノビア、あいつら何の話をしているんだ?」

「知りませんの? ワタクシ達はフレイヤの館で何もせずここに来たのを覚えてますか?」

「おう」

「男性の英霊は一度フレイヤとベッドを共にして気に入られた英霊はフレイヤのベルセルクとして勧誘されるのですわ」

「ベッドを共に? ああ、セ○クスか」


 周囲のヴァルキリーや英霊に、ちょっと衝撃が走る。

 エイルは耳まで真っ赤にしてうつむいてしまう。


「ていうかジュウイチって確かアイルのベルセルクなったんだろ? 上司権限でどうにかしないのか?」


 立ち上がり、直隆はフレイヤに苦言をていした。


「私は一応女神様よ? 他人のベルセルクを奪う真似はちょっとね。あぁ、でも今思い出してもジュウイチはすごかったわぁ。現代じゃ英霊なんてほとんどいないから久しぶりの新人君だったけど流石自称生前だけで一〇万人切りの傑物。ハンパじゃなかったわ」


 直隆と向き合ったまま、フレイヤの顔がトロけて今にもよだれを流しそうだ。

 エイルよりも明らかに大きい爆乳がやわらかく揺れる。


「まさかこの私を気絶させてその隙に逃げるなんて……起きたのは三日後、立てるようになたのは十日後、というかついさっき。四八手裏表合わせて九六手+ジュウイチスペシャル一一個と最終秘奥義一つ、合計一〇八種類、快楽追求させたらやっぱり日本は世界一ね」


 顔をデレデレさせながら思い出にひたるフレイヤだった。


「っで、お前はなんでここにいるんだよ?」

「当然、私も参加するのよ」


 周囲のヴァルキリー全員に衝撃が走った。

 フレイヤは最強の女神であり、彼女の持つベルセルクは当然、最強のオールスターチームである。

 とてもではないが、勝てる気がしない。


「本当はスーパーシードで、優勝者が私に挑戦できる、と言う風にしようとも思ったのだけれど、それじゃつまらないわ。全ての種目で一位を独占したほうが目立つもの……エイル兵長!」


「ハイッッ‼‼」


 ビシィッと敬礼するエイルを、長身のフレイヤが見下ろす。

 もう先程までの軽い雰囲気は無い。

人間離れした色香と威厳。

 尋常ならざる神威を前に、エイルは漏らさないようにするので必死だ。


「戦国最強真柄直隆を手にしたのだから、すぐに負けてはダメよ。それとみんな」


 周囲のヴァルキリーへと視線を回して、皆一斉に直立不動の姿勢を取った。


「フェスタを優勝するには、この私に勝つのが条件だから、忘れないようにね」


 女神の忠告に、戦乙女達は震えあがる、だが、一部の例外が前に進み出る。


「御忠告、痛み入ります」

「肝に銘じておきましょう」

「決勝では良いヴァルバトを」

「我らも己の全てを賭けて挑みまする」


 彼女達の登場に、エイルが目を丸く見開いた。


「おいどうしたんだエイル」

「ばか! あんた知らないの、あの四人はね」


 エイルは、フレイヤに言葉を返したヴァルキリーから順に説明する。


「まずインド神話最強の英雄カルナとデンマーク最強の英雄ベオ・ウルフを有するジークルーネ大佐。それに円卓の騎士王アーサーを有するオルトリンデ中佐。そして円卓の騎士ガウェインを有するヘルムヴィーゲ中佐とランスロットを有するヴァルトラウテ少佐よ……それに……それに」


 五人目の戦乙女がフレイヤの前に進み出た。


「フレイヤ様、ではフェスタでは正々堂々と雌雄を決しましょうぞ。私が勝った暁には、男を遊びを自嘲し、女神に相応しい気品を実に付けて頂きます」


 フレイヤに負けない美貌、だがフレイヤのような剥き出しの色香はない。凛とした気品に満ち溢れた女騎士。


 見ただけで男も女も魅了する彼女こそは、


「あの人があたし達ヴァルキリーの隊長、ブリュンヒルデ少将。北欧神話最強の英雄ジークフリートの奥様よ」


 ブリュンヒルデは、強い眼差しでフレイヤを見据える。


「また、此度はフレイヤ様同様女神であられる運命神スクルド中将がギルガメス、エンキドゥ両名と契約し参戦。さらに日本の高天原よりスペシャルゲストとして吉備津命と坂田金時……いえ、桃太郎と金太郎、それにヤマトタケルとリミッターをかけたスサノオ様とオオクニヌシ様が英雄として参戦されるとか」


 フレイヤの顔が嗜虐に歪む。


「へぇ、それはそれは、私のクーフーリンが喜ぶわぁ」


 女神フレイヤと戦乙女頭ブリュンヒルデ。


 両名の間に火花が散って、エイル達一般ヴァルキリー達は震えながら二歩三歩とあとずさった。


「いいわ、ブリュンヒルデ。私が貴女に、引導を渡してあげる」

  

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