第7話 ヴァルキリーたちの父親は人間?

 直隆が三人の間にチョップを差しこむ。


「そんで、ようするに俺は明日、あの南蛮人と殺し合って勝てばいいんだな?」

「ええ! 英霊は死んでも一日で復活するから死んでも勝つのよ! 大事なのはあんたの命よりあたしの名誉なんだから!」

「お前ほんとギルドマスターの才能ねぇなぁ」

「なんですって! 人間のくせに生意気よあんた!」


 ジト目で見る直隆に両手を振りあげて怒るエイル。

 その様子を、アイルとジュウイチは優しい眼差しで見てあげた。


「はいはい喧嘩はそこまで。それにエイル、人間のくせに、なんて言っちゃだめよ。そんなだから貴女はいつまで経っても専属英霊がつかないんだから」


 姉にたしなめられて、エイルは両手の人差し指の先をちょんちょん合わせながらうつむく。


「だ、だってぇ……あたし達は神に仕えるヴァルキリーで、天使とか天女とかと同じで、人間なんかよりもずっと高等な」

「女しか生まれないヴァルキリーはみんな人間の英霊と結婚して子供を残すのよ。エイルだっていつかは人間の男性と結婚するし、私達のパパだって人間なんだから、パパ悲しむわよ?」

「ぱ、パパは……別だもん……」


 エイルは頬を染めながら視線を逸らす。


「あらそう♪ パパも喜ぶわ♪ ていうかベルセルクなんてパパに頼めば家臣の人貸してくれるでしょ? 意地張ってないで早くパパに頼めばいいのに」


「あ、あたしは自分のベルセルクは自分で見つけるの! スイレーみたいにパパが武田信玄だからって武田四天王を自分のベルセルクしたりなんてしないんだから!」


 ジュウイチが頷く。


「あーそっか。オーディンの娘である第一世代のヴァルキリー以外は全員英霊の娘なんだから、父親が王様系の英霊なら父親の家臣を借りれば簡単にベルセルクが手に入るのか」


「親の七光なんてカッコ悪い真似、あたしはお断りよ」


 親の七光。という単語に、直隆はちょっと興味ありげにエイルに視線を向けた。


「あ、それと私はジュウイチのモノになる事にしたから、今度パパに報告しに行ってくるわ♪」

「はい!?」


 エイルはズガガーンと音がしそうな顔でショックを受ける。

 アイルは乙女の顔でジュウイチの手を取った。


「もうね、ジュウイチね、すっごく優しくてすっごくたくましくて、すっごくすっごくすごいの♪ ヴァルハラに来る英霊はまず全員フレイヤ様の館に行かなきゃいけないでしょ? フレイヤ様もジュウイチにめろめろで大変だったんだからぁん♪」


「俺一五人の本妻と一〇〇億の側室がいたけど、まさかヴァルキリーが嫁いで来るとは思わなかったなぁ」

「やぁん♪ ジュウイチってば本当にモテモテなんだからぁ♪」

「恋が盲目過ぎる!?」


 驚愕するエイルの肩に、直隆の手が置かれて、振り返る。


「エイル、あきらめろ」


 エイルはがくっと肩を落とす。


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ニワトリが飛べないのは才能でも努力でもなく環境のせいだ! 無能な少年と師匠の出会いが、一人の英雄を誕生させる──。

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