第8話 エロハプ

「じゃ、あたしはシャワー入って来るから、あんたはおとなしくしときなさいよ」

「シャワー? あー、あの水魔法と火炎魔法の力でお湯が出るレンコンか。はいはいわかりましたよっと」


 エイルがリビングからいなくなり、直隆はソファに腰を下ろす。


「ふぅー、やれやれ……」


 夜。直隆はエイルのギルドホームで大きく息をついた。


 リビングのソファに座ったまま、なんとなくテレビをつける。


 投影魔術で壁に画面が現れて、魔法が使えない英霊用のリモコンのボタンを押すと色々なチャンネルが見られる。


 一応はお笑いも歌番組もドラマもあるが、ヴァルハラという土地柄、どうしてもヴァルバト関係が多い。


 ヴァルハラ城下町にいくつもあるアリーナや、近くの森、洞窟、ダンジョンで行われるヴァルバト中継が多い。


 他にも今注目の英霊は誰だとか、色々な英霊のランキング番組が流れている。


 そういう番組はあえて避けて、イギリスの喜劇王チャップリンと日本の笑いの元祖井原西鶴が漫才をするのをしばらく見てから、今度は手塚治虫とウォルト・ディズニーの対談を見て、音楽番組でビートルズを一曲聞いてからテレビを消した。


「…………」


 天井を見上げて、また息を吐きだした。


「ヴァルバトか……」


 全時代全世界の、まさしく古今東西全ての偉人英雄があらゆる競技で競い合うこの世界。


 生前は、人は死んだら天国か地獄に行って、輪廻の輪に乗って生まれ変わると思っていた。


 でも死ぬと目の前に南蛮人の女が現れて、冥府の王スサノオと地獄の王閻魔大王と面会したあとこのアースガルズに連れてこられた。


 生前は、まさか自分がこんな状況に置かれるとは思っていなかった。


 そう、生前は……


「…………」


 直隆が思いだす生前の光景。


 迫る織田徳川連合に立ち向かい、数えきれない雑兵を殺し、武者を殺し、そして……


「あー、ちくしょう」


 がしがしと頭をかいて、ソファの上にあぐらをかいた。


「……俺も湯あみするか」


 直隆は脱衣所へ行くと着物を脱ぎ、フンドシを解く。

 こちらの影が見えたのだろう、風呂場からシャワーの音が止まって、エイルの声がした。


「どうしたの直隆? 何か用?」


「ああ、まあな」


 直隆は浴室のドアを開けた。


「俺も湯あみしようと思ってな」

「へ?」


 エイルが真顔無表情で固まっていた。


 状況が理解できていない顔だ。

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