第6話 未来の英雄
「ジュウイチ?」
エイルは、姉の家に突如現れた見知らぬ男にちょっと警戒する。
「ほら、先週新しく地上でスカウトしたって言ったでしょ? それがこの期待のスーパールーキージュウイチちゃんなの♪」
アイルはジュウイチに抱きついて頬ずりをする。
ジュウイチは慣れた手つきでアイルの肩に右手を添え、左手で頭をなでる。
するとアイルは喜んで、ジュウイチの頬にキスをして、ジュウイチはアイルの唇に軽くキスをして、アイルはますます笑顔になる。
「何やってんのよあんたわあああああああああ!」
エイルの右ストレートがジュウイチの顔面にクリーンヒット。
途端にエイルはしびれて、硬直してしまう。
「いったぁああああああ! あんた何でできてんのよ!?」
拳を押さえて床を転げまわるエイルに、ジュウイチは子供を見る大人の笑顔をみせる。
「はは。俺を傷つけたかったら武器は必須だぞ?」
「く~、あんた一体なにものよ……」
涙目で問うエイル。
「俺はコードネーム・ジュウイチ。ただの日本兵さ」
「何よかっこつけちゃって。第一今の地上はえーっと、パワードスーツだっけ? 他にも戦艦だがなんとか砲とか兵器ばかり強くて自分じゃなにもできないおこちゃまぞろいなんでしょ!? あんただってどうせ評価Eランクの」
「俺Xランクだけど」
エイルが石化した。
「え……えっくす?」
「うん、Xランク」
アイルが補足を入れる。
「あ、ジュウイチは評価対象外なの。この子、現代の英霊でしょ? 強さは使う武器兵器に依存するけど、でも使いこなす技術が高すぎるから兵器の強さじゃなくてこの子ならではの戦闘力だから。結局フレイヤ様やオーディン様も評価対象外って事にしたの」
「来たばっかだから、これから色々覚えるよ」
「そ、そうなの……」
兵器に依存する、と言っても、人外であるヴァルキリー、エイルの拳がまるで効いていない事を考えれば、肉体的戦闘力は本物だ。
「おいエイル。つうか俺が明日戦うのはいいけどよ。種目はなんなんだ?」
「普通のデュエルよ」
ジュウイチが首を傾げる。
「アイル。デュエルって何するんだ?」
「ごめんごめん。まだその辺説明してなかったわね」
「ただタイマン張るだけだよ」
ぶっきらぼうな直隆に続き、アイルが優しく補足する。
「あのねジュウイチ。ベルセルク同士が戦うヴァルハラバトル、通称ヴァルバトにはいろんな種目があるの」
途端にアイルはどこからか取り出したメガネをかけ、教師のようにぴっと人差し指を立てる。
「まず英霊同士が一体一で戦うデュエル。そしてチーム戦のチームデュエル。フィールド内の宝物を探して宝物の数や質、スピードを争うトレジャー。フィールドのモンスターを狩って、その質と量を競うハンティング。決められたコースを素早く移動してゴールを目指すレース。他にもあるけど大きく分けるとこの五つが代表的ね」
「戦争ってのはないのか?」
殺意に満ちたキリングマシーンフェイスで問うジュウイチ。
アイルは気にせず笑顔で、
「複数のギルド同士での大規模バトルで行われることがあるわ。ジュウイチが得意そうね」
「これでも一度の戦いで三〇万撃墜したことがあるぞ」
「そうなの!?」
「お姉ちゃん騙されないで!」
「嘘なの?」
「どうかな?」
ジュウイチは歯を見せて笑う。
「話を戻すぞ」
直隆が三人の間にチョップを差しこむ。
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