第47話 商店街

建国式を終えた後、10人程の人が城を訪れていた。


目的は自分の店を構える為だ。


前もってシトリーに、以前商業ギルドで出店許可を出してもらえず落ち込んでいた、服を作っているお兄さんのところに行ってもらい、国主体で商店街を作る計画をしている話をしてきてもらった。


店が成功するかどうかは本人次第だけど、商業ギルドの嫌がらせからは守ると話してもらっている。

一応、国として商業ギルドが関係していると認めているわけではないので、そういった嫌がらせを受ければ国の管轄として対応するという話だ。


この街で店を出すつもりがまだあるなら、そこで店を出さないかと勧誘に行ってもらったのだ。


それから、お兄さんの知り合いで同じように店を出したくても出せない人がいたら声を掛けて欲しいとも言ってある。


結果として10人程集まった。


今はルマンダさんが対応してくれている。

ルマンダさんにずっと商店街の対応をやらせるつもりはないので、いずれは誰か他の人に任せるつもりだけど、最初はルマンダさんにお願いする。


ある程度波に乗るまでは、商業ギルドからの妨害を含めてトラブルが多く発生すると思われるからだ。


商店街を作る為の土地は既に確保しており、フェレスさんに10軒ほど店舗として使えるように建物を建ててもらうように話はしてある。


この店舗は一時的に貸し出すもので、自身の店舗を建てるまでの間、仮で使用してもらう。

すぐに販売が出来る様にする為の配慮であって、建物をプレゼントするわけではない。


これは、新規に国が始める事業に参加するリスクを負ってもらう代わりに国から援助をしますということなので、ある程度経ったら建物ごと売る予定だ。


今は莫大な資金を持っているけど、本格的に国として動き出したら、どんどんと減っていってなくなるかもしれない。

なので、国としての利益もちゃんと考えないといけないとルマンダさんに言われてしまった。


確かに僕が元の世界に帰ったり、死んだ後もこの国はあり続けるはずだ。

長い目で考えると手持ちのお金は多くないのかもしれない。


お金の管理とかは正直わからないので、僕の譲れないこと以外はルマンダさんに任せることにする。


しばらく部屋で待っていると、ルマンダさんが報告に来た。


「まずは結果からご報告致しますが、4店舗開店することになりました。それとは別にあと2店舗、開店する方向で話を進めています」


「売る物は?」


「服飾、靴、家具、雑貨の4店舗は商品の数は少ないですが、すぐに出店出来ます。残りの2店舗は食品を扱う予定なので、準備が整い次第になります」


「食品を扱うってことだけど、そこの店に卸す人がいないからすぐには出店出来ないって認識でいいのかな?」


「はい。おっしゃる通りです」


「それなら、問題はなさそうだね。その辺りも妨害が入るようだったら手を貸してあげて」


「かしこまりました」


「10人くらい来てたよね?店を出すことにしたのは6人ってこと?残りの人は?」


「11人来ておりました。雑貨と服飾の店を開く予定の方は夫婦で来ておられましたので、帰られたのは3人だけですね」


「国が全面的に援助するのは今だけだって話はしたんだよね?」


「もちろんです」


「なら仕方ないね。とりあえずその6店舗が問題なく営業出来ることがわかれば、やりたいって人も増えるでしょう。今日来たのは服を売ってたお兄さんを元に話を聞いた人だけだからね。他にも店を出したいけど、出せないって人はいるはずだよ。ルマンダさんに色々と頼みすぎちゃってるけど、お願いね」


「かしこまりました」


そして3日後、僕は服飾屋へと足を運ぶ。


「いらっしゃ…………い、いらっしゃいませ!」

お兄さんはあの時の違って元気そうな顔で挨拶をしようとして、僕の顔を見て声を詰まらせた後、言い直した。


「何か困ったことはありますか?」

僕はお兄さんに聞く。


「あ、ありません」

お兄さんは緊張した様子で答える。


「そんなに気にしないでくださいね。言葉も崩してもらって構いませんよ」


「いえ、大丈夫です」

大丈夫では無さそうだけど、無理にフレンドリーに接するのもツラいよね。


「本当に困ったことはないですか?お客さんが思ったよりいない気がしますが……」

いないことはないけど、少なく感じる。


「……商業ギルドを通していない店を潰そうとするというのは、知っている人も多い話です。巻き込まれることもあるので、みんな警戒しているのかもしれません」


「そっか。時間を掛けて問題ないって思ってもらうしかないね。安全に商売が出来るようにはちゃんと動くから、何かあったらすぐに城の誰でもいいから言ってくださいね。本当はそうなる前に対処したいけど、怪しいってだけで商業ギルドを潰すわけにはいかないからね」


「ありがとうございます」


「それで、今日来たのは今聞いたこともそうなんだけど、服を買いに来たんだ。大量に注文したいけどいいかな?」


「すぐに作ります」


「大至急ではないから、無理しない程度でね。それじゃあこれをお願いします。小さいサイズのやつから順番に作ってもらっていいかな。ある程度時間が空いたら取りにくるから」

僕は欲しいものが書かれたメモを渡す。


「かしこまりました。色と柄はどうしましょうか?」


「お兄さんにお任せします。数が多いと思うから、被りすぎない程度で作ってくれれば問題ないです」


「かしこまりました」


「それじゃあよろしくね。何かあれば遠慮なく言ってください」


「ありがとうございました」

店を出た僕は、次に靴屋へと向かい同じようなことを聞いて、次は靴を注文する。


家具屋と雑貨屋も同じように話を聞いた後、注文した。


新規の店の売り上げに貢献するという意味もあるけど、要らないものを注文したわけではない。


僕が注文したのはスラムの人の生活に必要な物だ。

仕方のないことだけど、限られたお金で生活するには食べ物を最優先にしないといけない。


その結果、家具はもちろん服や靴もボロボロの物を使うしかない。

クロウさんに聞いたら、服も靴も、成長して着れなくなったら次の子へと渡していくらしい。

穴の空いた靴でも裸足よりは良いので、それでも喜んでもらうようだ。


実際、裸足で歩いている子供を僕はスラムで何人も見かけた。


クロウさんに現物支給で雇うと言った以上、それをちゃんと守ろうとこうして動いている。


城に直接売りにくる人達がいるけど、その人達は大体“良い物”を売りにくる。

もちろんその分高い。


少し歩くだけで普段使いするには十分な程に質の良い物が買えるのだから、売り上げに貢献とか関係なく、こっちで買った方がいい。

これを着て舞踏会に行くわけでもないのだから。


スラムの片付けもそろそろ終わりそうだと聞いているけど、フェレスさんは隷属された人を助けに行っているので、戻ってきてから家を建てることになる。


出かける前に、屋根があるところで寝れるように大きい倉庫のような家を建ててもらったので、それまではそこで我慢してもらうしかない。


オボロも付いて行っているから危険は少ないと思うけど、隷属された人を助けないといけないから、頼んだ仕事は簡単ではないはずだ。


出来るだけ身バレしないようにしてね。とは言ったけど、呪いを解く為に呪法の核を持っている人を探して接触しないといけない。


結構帰ってくるまで時間が掛かるかもしれないな。

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