欲望
キザなRye
第1話
お金―それは人を一つも二つも変える。お金があることで有頂天になる人もいればないことでどよんとした空気を出す人もいる。誰しもがお金を欲し、お金のために苦にも立ち向かっていく。
SNSには“お金配り”ということをする人たちがいる。自分のお金をそれを欲しいと思う人たちにあげるというものである。参加方法はその人によりけりだが大抵はフォローを中心とした何らかの接触が必要となる。一回に配られるお金の量は人によって大きく異なる。十万円の人もいれば百万円の人もいる。周りの人の幸せを産み出してあげるためにここまでのことが出来るのは純粋に尊敬出来る行為だ。
何がなんでもお金が欲しいのだ、と辰哉はお金を得るのに必死だった。何かを買いたいというわけではない。お金があるという事実が辰哉を満たしてくれた。ただ高校生の辰哉にはまとまったお金を得る手段がお小遣い以外にはなかった。どうすることも出来ないのである。
ある日、いつものように辰哉がSNSを見ているとある投稿が目に飛び込んできた。
“100万円を1名にプレゼント”
その言葉にどれだけ興奮させられたかは分からない。きっと言葉に表すことの出来ない壮大な感情が彼の全身を巡りに巡ったのだろう。投稿を隅々まで読み尽くし、どういう条件で貰えるのかを把握し、行動に移した。欲しすぎて仕方がなかったのだろう、複数アカウントで同じことをした。
毎日のようにまだ当選者決まっていないかなと辰哉は投稿を確認した。今日もまだか、今日もまだか、と期待を膨らませていた。実際は最初の応募を募集していた投稿に当落の発表日は記されていたが、辰哉はそんなことには目もくれていなかったのでこのような行動になってしまっている。
数日後、当落の発表日となった。この間、辰哉は性懲りなく毎日のように当選者決まっていないかと確認していた。制度設計の上で全員に当落の通知を送るのではなく、当選者にのみ連絡が行くようになっていた。
辰哉は気付いた、連絡が来ていることに。ただよく見るとプレゼントを企画していた人とアイコンやプロフィールなどは同じだが、アカウントが違っていた。それは本人かもしれないし、そうでないかもしれない。その人からの指示の通りに作業を進めていくとどう考えても海外の言葉を翻訳したような意味の通じない日本語が姿を現した。ここで辰哉はこれは詐欺だったのではないかと気付いた。元々詐欺なのではないかと疑っていたらしいのだが、ここで疑いが確信へと変わった。
さらに進めていくとクレジットカードの番号の入力が出現した。第一辰哉は高校生なのでクレジットカードは持っていない。それに現金プレゼントにクレジットカード情報の入力があるというのはどう考えてもおかしい。疑問に思ったので応募者を募集していた人に一連のメッセージを送った人のアカウントを添付して辰哉が訪ねるとそれ以降、その人からの接触はなかった。そしてやはり詐欺だったのだと確信した。
当落が出るまでの間の楽しみにしていた時間を返せ、期待していたのは無駄だったのかと辰哉は嘆いた。
欲望 キザなRye @yosukew1616
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