好男子

 両手をついて謝ったって許してやらない。何をしたって許してやるもんか。開き直るあの態度が私の怒りに油を注いでいるのを理解してないみたいだ。それなのに、人の気持ちを理解したつもりでいるのが腹が立つ。

 馬鹿だ馬鹿だ、そう思っていたけどここまで馬鹿だったとは。そして、そんな男を好きになった私も馬鹿だったと後悔した。

 彼をそんなふうに見下してしまうのは自分の心に余裕がないからだろうなあと思う。

 情けない。みっともない。けど、あいつが悪いし許せない。馬鹿馬鹿しいよなあ。そうだよなあ。

『謝る気になったか?』

 こんなメールを送ってくる人なのを見抜けなかったのが馬鹿らしく感じる。電話なら伝わる思いも無感情なメールの文章じゃ伝わらない。だから、彼は私の彼氏なんだなあ。

 ため息ひとつ吐くのも億劫だ。

『うるせえ』

 今の気持ちを入力するのも面倒で、完結させた四文字。だから、私は彼の彼女なんだなあ。

『汚い言葉使わないで。君がブスになるよ』

『もうブスだからいい』

『どんなに君がブサイクになっても、僕は君を素敵な人だと思うだろうけどね』
 こんなところが憎らしい。彼を嫌いになれない私が憎らしい。

『私、悪くないから』

『知ってる』

 彼のこういうところが嫌いだった。

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