元気
「覚えてろよ、バーカ!」
彼はそう言うと、胸ぐらを掴まれて、強烈なパンチを食らった。どれだけ殴られても立ち上がるのは何故だろう。そんなことをしたって意味なんかないのに。
私は泥だらけの彼の背中を追って、「大丈夫?」と声をかけた。
「なんだよ、ブス」
切れて血が出ている唇が痛々しい。
「ブスってなによ。心配してやったのに」
「次はゼッテー負けねえ」
そう言った彼の目に、涙のひとかけらも浮かんではいなかった。
勝てもしない相手に何度も何度も真正面から戦うなんてバカなこと、今どきやるやつなんかいるんだ。
……そんなバカのことをキライになれない自分がイヤだ。
「女に、情けねえツラばっか見せてられるかよ」
ぶっきらぼうにそう呟く彼の横顔が目に焼き付いている。
私は黙って、彼の背中についた土を払ってやった。手が汚れたって構わないと思ったから。
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