第24話 悪神
空が暗く、黒く、闇に染まった。最高神とはおよそ反対に位置する空が。世の深淵とはこういう色をしているのかと思うほどに真っ暗になる。
その光景は異常だった。ある場所を境に闇と光が共存している。それはまるで夜と昼が共存しているようで、天国と地獄が一つの空間にある。そんな異常な光景だった。
「久しぶりだな。最高神。我はお前の忌む相手、悪神アーリマンである。」
禍々しい声。この世の何よりも闇に染まったような。その声にこの世の全ての悪意が込められているようなそんな声で悪神アーリマンが最高神に向かって喋りかける。
「悪神アーリマン………神にして唯一、名を持つ例外的存在よ。久しいな。何をしにきた。」
「それはないだろう、我が半身よ。お前がこの世界の
「どれだけ昔のことを言っているのだ。そんな過去はとうに忘れたわ。」
我が半身とはどういうことだ。こいつらは何の話をしている。まあ、今は悪神の登場にみんなそっちに注目しているおかげで距離をとれたのだが。そばにはレイラがしっかりついて来ている。ジェームズやシャーロットが心配だ。コールは……大丈夫だろう。それより今のうちに回復をしておこう。
「復讐の子よ!」
悪神が俺を呼んだ。俺は空を神々を睨みつける。俺は覚悟を決めた。二柱の神を相手にはできない。神なら加護を無視して俺を殺すことができるかもしれない。今のうちに最後の悪あがきでもするべきか。
「復讐の子よ………ありがとう。最高神……いや、我が半身をよくここまで抑えてくれた。お主がいなければ世界の
そう言ってアーリマンは俺に深々と頭を下げた。おそらくその場にいた者達全てが呆気に取られただろう。
「おい、アーリマン!何をしている!神である我らが人間ごときに頭を下げるなどあってはならぬ!」
「戯け!!なぜ我が頭を下げていると思っている!お前の勝手を見逃すのもこれまでだ。もうお前を最高神にしておくわけにはいかぬ。」
そういうと悪神の手から黒い粉が振りまかれる。まるで先ほどの最高神と真逆のもの。それは魔族へと降り注ぐ。
「さぁいけ!我の守りし魔のもの達よ!人間に、最高神に立ち向かうのだ!」
喝采を受け、魔族が反撃を開始する。それに負けじと王国騎士も応戦するが力はほぼ同じ。殺し、殺され、叫び、逃げ惑い、踏まれ、蹴られる。そんな残虐な戦いが始まった。
俺はどうするべきか迷っていなかった。どちらにつくかは一目瞭然。結果どうなろうと、その選択しかあり得ない。
「レイラ、魔族側につくぞ。」
「ええ、それがいいわ。」
レイラも考えは同じのようだ。俺たちは再び斬った。殺した。殺戮を繰り返した。
「復讐の子よ、こちらに着いてくれるか。ならばその礼を与えねばならんな。受け取れ!そしてできることなら最高神を打ち倒してくれ!」
アーリマンから再び黒い粉が振りまかれる。しかし、今度は少量。俺の元に、そしてレイラの元に降り注いだ。
力がみなぎる。体が軽い。痛みが傷がなかったように。これまでとは比べ物にならないほどの強さだ。
「レイラ!」
「軽いわね。これならいけそう。」
「いくぞ!」
再び走り出す。王国騎士のみを斬った。斬って、斬って、斬って、斬りまくる。目指すは最高神の足元。この力があれば神も殺せる。
そこについた時、俺たちの後ろには
「ほお、やるな。愚かな人間よ。あの騎士達をやったか。ならば私が直々に相手してやろ。」
そういうと、最高神の体が光だす。それまでの輝きとは違う。目を瞑ってしまうほどの閃光が戦場に降り注いだ。
「お前はこの姿を気に入ってくれるだろう?」
そこにいたのは、ブレイブの姿をした最高神。最高神の神たる輝きがなければブレイブと見間違えるだろう。
「実はこんな形でわたしたちは一度あってるのを知っているか?愚かな人間よ。その時は器が弱すぎて負けてしまったが。」
そんなことあったか?
「オズ……覚えてる?私たちが出会った時のこと。あの時あなたのお父さんの死体と戦ったのを……」
まさか…そんな………あの時からこいつは………許せない。死体になった父を弄んだあげく、今度はブレイブの死体を使いやがって。
「離れろ………離れろよ!その体から出てけ!」
思わず大声を上げてしまう。
「何を言っている。愚かな人間よ。殺したのはお前だろう。それにわたしはこの男を長い間加護で守ってやってたのだ。これくらいならいいだろう。」
憎しみが込み上がってくる。その憎しみによってさらに力が上がる。気づくと、アーリマンは消えて空は光に満ち溢れている。周りでは魔族と王国騎士が戦いを繰り広げ、大地は血に染まっている。
「お前を殺し、復讐を終わらせる。」
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