全てに復讐
第14話 いざ
朝がきた。眩しいほどの光を帯びた太陽が地平線から顔を出す。そこで俺は決めた。俺の復讐のため、レイラの復讐のために神を敵に回す。最高神も悪神も関係ない。全ての神を敵に回すと。
神を敵に回すということは神を殺すということ。そうするなら、神を地上に引き
「いいの?全ての神を敵に回すってことは人間とも魔族とも敵対するってことなのよ。」
もちろんそれは承知の上だ。もとから人類は滅ぼすと決めていたのだ。そこに魔族が加わったくらいどうってことない。俺たちにとってはそんなこと誤差の
「ああ、そんなのなんてことない。今の俺たちなら。そうだろ?」
「……ええ……そうね……あなたこの数時間で少し丸くなったんじゃない?」
そうなのだろうか。自分のことはいまいち分からない。長い間俺を近くで見てきたレイラがいうのだから、きっとそうなのだろう。
「………そうかもしれないな。」
でも問題は300年前、レイラがやった時と同様に神が降りてくるのかどうかだ。あの時のレイラは神を殺そうと思って人間を殺していたわけじゃない。しかし今回は、神を殺すために人間を殺すのだ。おそらく神という奴らは俺たちの考えていることなどお見通しなのだろう。
「問題がある。300年前と違いって今回は人間を殺しまくった結果、神が降りてくるのか?」
「それは分からないわ。でもオズ……あなたには……いいえ、あなたの問題はもう私の問題である。私たちには忘れてはいけない大事な問題があるわ。」
「まだ何かあるのか?」
「ええ……復讐の神は最高神側の派閥だと勇者は言っていたわよね。じゃあ、こんなことしてあなたの加護は奪われないのか。という問題よ。」
なんだ、そんなことか。俺もそれについては一度考えた。でも、それはないと自身を持っていえる答えを俺にはある。
「レイラ、それは確実にない。」
「どうして?」
「考えてみろ。300年前もお前は人類を殺しまくっていたが加護が消えることはなかったんだろう?」
「ええ……でもそれは、別に神を殺そうとまでは思ってなかったからで……」
「いや、『復讐の加護』ってものをもう一度考えてみてくれ。」
「『復讐の加護』はたしか…………あ!!」
「そう、俺の復讐心が無くならない限りこの加護は消えない。おそらくこれは神にも
「でも………」
「そうだ。もう一つの加護、『復讐の神の化身』はどうか分からない。正直な話、これがなくなればかなりきつい戦いになるだろう。」
そう、そこだけが気がかりなところだった。しかし、これもやってみなくちゃ分からない。
「ねぇ、やっぱりあなた丸くなったんじゃない?今のあなたの顔を鏡で見せてあげたいわ。」
俺はどんな顔をしているのだろう?俺自身少しみてみたいという気持ちが起きるくらいにレイラは嬉しそうな、楽しそうな、そんな顔をしている。
それはともかく、もうかなりの高さまで陽が上った。王都の方からはぷんぷんと殺気と魔力を匂わせている奴がいることを俺は気づいている。おそらく……いや、確実にブレイブだ。返事をしに来い。おそらくそう言っているのだろう。
「行くか……」
「ええ……そうね。あの子たちはどうするの?」
「あの二人、ジェームズとシャーロットは置いて行く。レイラ……あの二人を遠くに飛ばせる魔法はないのか?」
「あるわよ。テレポートが。」
「じゃあ、それでどこか遠くの集落の近くにでも送ってやってくれ。あいつらにはちょっとこの戦場はきつい。」
「ええ…………そうね……」
俺はジェームズの理想とする復讐を知っていた。本人から聞いたわけじゃない。シャーロットと話しているところをたまたま耳にしただけだ。あいつは強者に復讐し、弱者を救う。そんなことを言っていた。元々俺たちとあいつの理想は違った。なのに俺はついてくることを容認していた。
でも、もう復讐のスケールが変わったのだ。あいつらに耐えられるような戦いじゃない。
「あいつは強い。自分の為したいことは自分で成し遂げられるだろう。それに、あいつにはシャーロットもいる。」
俺はシャーロットとあまり話したことはなかったが、知っていた。ここまでの道中、いろんなことに気を遣ってくれていたこと。あいつならジェームズを支え、ジェームズの力になってくれるだろう。
「ええ……………そうね………」
「何言ってるんですか!師匠!それにレイラさんも!」
「そうですよ。二人とも水臭いんだから〜。」
振り返った俺とレイラの前にはジェームズとシャーロットが立っていた。
「いつの間に?」
レイラが感嘆の声を上げる。たしかに俺もレイラも気づくことができなかった。
「師匠!僕たちを置いて行こうったってそうは行きませよ。僕はもちろん復習が目的で師匠について行くことにしました。でも、師匠に恩があります。あの地獄のような毎日から救ってくれた師匠には、例え自分の理想を曲げてでも返さなければいけない恩があるんです。」
「いや、あれはただ俺があの街に腹が立ったからやったことで……」
「そんなの関係ありません!ジェームズはいつもオズワルドさんのいないところで言ってますよ。師匠はすごい。師匠と一緒にいて僕も師匠みたいになりたいって。それに私はそんなジェームズについて行くって決めたんです。」
「ちょっとシャル!恥ずかしいからやめてよ。」
いつの間にかジェームズがシャーロットのことを愛称で呼んでいる。
「わかっているのか?!この戦いの果てにお前の望むものは何もないかもしれないんだぞ!」
「はい!……わかってます!」
「それでもついて行くっていうのか?」
「はい!着いていきます。……大丈夫です。もし危なくなったら、シャルの魔術で逃げますから。あの時の霧はシャルの魔術だったんですよ。」
だからさっきは気づかなかったのか。あの霧は気配と魔力を消す力がある。
しかしいいものか。こんな子供を俺たちの都合に同行させて。こいつらは確かに強いが、もしかしたら死んでしまうような戦いに同行させるのはどうかと思う。
「オズ……いいんじゃない?あの子たちの真剣な顔見たでしょう?」
そっと俺に近づき、レイラが俺に最後の一押しをくれた。そうだな。あいつらは俺の強さを信頼している。ならばいざというときは俺が守ればいい。俺にはその強さがある。
「わかった。ついてくることを許す。………でも条件がある。少しでもやばいと思ったらすぐに霧を出して逃げろ。」
「「はい!」」
二人は揃って返事をする。大丈夫だ。この二人なら。
「よし!じゃあ行こうか。殺戮の始まりだ。」
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