第813話 黄金に魅入られた者たち(10) 

 ――神堕ち島の村長宅。

日が昇ったばかりの村長宅前には、数人の人影が集まっていた。


「菊池村長。村民が何人か外部から来た男達に連れていかれたようです」


 昭和中期の服装をした40歳前後の男が、菊池村長に話しかける。

 菊池村長は、深く溜息をつく。


「まったく――、やはり見たままだったということか」

「はい。魂が濁っていますから」

「それに関しては――」

「伝えてはおりません。戦時を生き抜いた我々を簡単に下せると思っていたようですから」

「だが、時が来れば――」

「分かっています。それと、村長が島を立ち去るようにと話した――」


 そこで男は口を閉じた。

 そして視線を村長宅の門へと向ける。

 すると自然と村民たちの視線が門の方へと集まる。

 村長は険しい表情から一転して笑顔になり門へと近づく。


「これはこれは、岩本警視正。どうかしましたか? こんなに朝早く」

「じつはな、昨日、話をしていた鉱山への案内を頼みたいのだがいいか?」

「こんなに早い時間帯にですか?」

「ああ。この島が何十年も外界と隔たれている理由を調べたいからな」


 人の好さそうな笑みを張り付けたまま岩本警視正は嘯く。


「そうでしたか。それでは、早速、案内いたします」

「村長!」

「いい。それよりも桟橋に行きなさい」

「分かりました」


 数人の村民が走って村長宅から出ていく。

 その際に岩本警視正の横を通り過ぎるが、その村民の目には、岩本警視正を気にかけているような素振りは見受けられない。


「随分と朝から慌ただしいのだな」


 走り去っていく村民の後ろ姿を見送った岩本警視正は、そう口にする。


「漁関係ですから」

「なるほど……。島だから、そういうことか」

「はい。それでは、すぐに鉱山に案内します」

「ああ、頼む。おい! 田辺教授にも、伝えてくれ」


 岩本警視正に同行していたSAT隊員の一人が、「分かりました」と、岩本警視正が逗留していた宿へと書けていく、

 しばらくして、菊池村長が用意を終えたところで丁度よく地質学者である田辺教授と共に考古学チームが到着する。


「田辺教授、随分と早い到着ですね」

「ええ。もちろん。昨日から話していましたからね」

「それは重畳。――では、菊池さん」

「分かりました。それでは、ご案内します」


 菊池村長を先頭にして地質考古学チーム、SATの隊員達、そして最後に岩本警視正が殿として山の方へと向かう形となった。

 村を出て高台へと向かって歩き始めること5分ほどでトロッコが通れるようにレールが敷かれた道に一行は出た。








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