第809話 黄金に魅入られた者たち(6)

 桟橋付近では、SAT隊員の手によりテントの設置が終わっていた。

 船に載せてあった保存食を口にしたあと、桟橋から村の方を見ていた純也は、首を傾げる。

 

「どうかしましたか? 峯山君」


 異常事態が起きてる現状、これからのことを話し合いするために神社庁からの出向組である純也に話を聞くために彼を探して桟橋まで足を運んだ風祭は純也の雰囲気が変わった事に気が付き背後から話しかけた。


「風祭さんですか」

「はい。風祭です。何かありましたか?」

「いえ。すごい速度で、竜道寺さんが村から此方に近づいてきているので、少し疑問に思っただけですが――」

「え?」


 風祭は、純也の言葉に村の方向へと視線を向ける。

だが、街頭の明かりが消えた村は、漆黒の暗闇に閉ざされていた。

たとえ何かが動いたとしても風祭には知覚することはできずにおり――、


「何か来ていますか?」

「え? あー」


 風祭の言葉に、純也が少し照れた表情をすると口を開く。


「人間には、霊力――、オーラというのがあって、それを見ることで、暗闇の中でも地形や人の存在を確認することが出来るんですよ」

「そんなことが……」

「まぁ、普通は信じないですよね」


 純也自身、自分が語っている言葉は、普通の超常現象から掛け離れた日常に住んでいる人間には理解できないという事は重々承知していた。

 

「そんなことはありません」


 ただ、現状、本土と繋がらないという異常事態に面している人間にとっては、純也の言葉はある程度は理解できるモノであった。

 そうでなけば、風祭が純也に話を聞きに来ることなぞなかったからだ。

 そんな二人の目の前に、一人の女性が姿を見せる。


「あれ? 峯山君に、風祭警視? どうかしましたか?」


 二人の目の前に現れた女性――、竜道寺は二人が揃っていることに少しばかり違和感を覚えつつも、語り掛けた。


「竜道寺さん、身体強化が出来るんですね」

「はい。それよりも、私が来ることを予見していたんですか?」

「予見というか偶然ですね」


 竜道寺も、彼女自身が姿を見せた事に関して純也がまったく動じていないことを理解すると同時に、何かしらの方法で純也が竜道寺が来ることを察していたと推察する。


「そうですか……」


 偶然と言う言葉。

 それに対して思うところが無かったわけではないが、竜道寺は素直に頷くことにする。


「あ、風祭警視」

「は、はい」

「少し込み入った話があるのですが、少々、時間を頂いても?」

「どうぞ」


 神堕ち島の菊池村長から言われた日の出と共に島を出ていくようにと注意。

 それに関して竜道寺が説明していくと風祭警視は困ったような表情を浮かべると口を開く。


「その話の内容が真実だったとしても、すぐに島から出るわけにはいかないですね」


 風祭警視は、そう口にした。

 


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