第804話 黄金に魅入られた者たち(1)
「はい。やはり何か問題でも……あったんですよね?」
「まぁ、はい……」
純也は、風祭からの問いかけに頷く。
「それで、これからのことですが、峯山君は何か変だとか思ったことはありますか?」
「連絡がつかない時点で変だとは思いますけど」
純也は即答するが、現状では島外との通信が出来ないという理由だけで、それ以外のことに彼は皆目見当がつかないのであった。
「そうですか……。そうすると、何かしらの非科学的な何かが現在の状況を作っているとは考えにくいと――」
「もしかして風祭さんは、岩本さんと違って、霊的な何かを信じているんですか?」
「信じているというか……」
「なるほど……」
純也は納得するように頷く。
信じてはいないが、化学では説明できない事が現状は起きているので、多角的に物事を捉えて、どんな小さな可能性であっても思考して起きたということか? と、純也は考えるが――、
「峯山君は、岩手で起きた事件を知っていますか?」
「岩手で?」
「はい。見たこともない化け物が、盛岡市内のホテルで確認された事件です」
「それは……」
純也は一瞬、言い淀む。「巻き込まれていた当事者です!」と言っていいのかどうかと。
「その反応で分かりました。神社庁は日本全国にありますからね。情報は共有されているのでしょう。もちろん、日本全国のSATの上層部にも、その情報は降りてきています」
「そうですか……」
「はい。ただ、あまりにも現実離れした化け物がホテルのモニター映像に映り込んでいましたから……」
「実感がわかないと?」
「それもあります。ただ、日本政府が、事件の情報統制をしてガス爆発だと発表したことから何かしらあることはわかっていました。それに、千葉県警察本部の中には、内閣府直轄の部隊が作られたという話も警察庁では有名な話でしたし……、そのトップが高校生だということも……。それだけ、今までの常識から離脱していた事が起きていたら、不可思議な存在がありうるという可能性もあると考えてしまうことは致し方ないと思いますが、峯山君はどう思いますか?」
「まぁ、俺もそう思います」
かなり友人の桂木優斗の話が警察庁内部では出回っていることに純也は驚きつつも素直に頷く。
「やっぱり――。――でも、今は何かが起きてるわけではないということですか?」
純也は一瞬考えこんだあとに口を開く。
「これは、俺の仮説なんですが、通信が阻害されているってことは、外部との連絡を取らせたくないという意志表示だと思っているんですよね」
「つまり、通信妨害ですか」
「あくまでも、一つの仮説では――、という話です」
「そうですか。ですが、峯山君は神社庁から派遣されてきた神官とか、そういう類なんですよね?」
「神官というか霊能力者とか退魔師のカテゴリーですかね(もしくは式神を持っているから陰陽師とか)」
「そうですか。そうなりますと峯山君の目から見て何かおかしい部分とかはありますか? ほら、昔から霊能力者は幽霊とか妖怪を見て戦うみたいな――」
「どこのアニメとか小説とか漫画ですか……」
「違うの?」
「さあ?」
純也自身、修行がメインだったこともあり霊能力者として現場で活動した事が無いため、どこまで判断していいのか分からない事であった。
そのために島の周囲に展開された異世界の神域結界に対して何も感じることが出来ずにいた。
「そう。つまり、峯山君から見て通信妨害された可能性があるという事だけね」
「そうなりますね。でも、それについては風祭さんも考えが至っていたのでは?」
「そうね。とりあえず岩本警視正に話をする必要性がありそうね」
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