第800話 ヒヒイロカネ鉱石(1)
――瀬戸内海、封印された島。
波止場において、頭を下げたSATの女性隊員である風祭を目にして竜道寺と純也は視線を交わす。
そして、互いに思考したところで、 竜道寺ではなく純也が口にする。
「風祭さんが、謝罪することじゃないですよ」
「そうですね。峯山君が言う通りに、風祭さんが岩本警視正の代わりに謝罪する必要はないかと。それこそ警察庁に所属している私こそ謝罪をしたいです」
頭を下げる竜道寺。
「こちらこそ、警察庁の同僚としてお恥ずかしい限りです。これからも、ご迷惑をかけることがあるかと思いますが、何卒、お願いします」
「竜道寺君? 竜道寺さん? 資料を見る限りでは――」
若干、困った表情をしながら口ごもる風祭に対して、竜道寺は「どちらでもいいですよ?」と、言葉を返した。
「風祭隊長!」
3人が会話をしていたところに、横からSATの隊員が割って入ってくる。
「どうした?」
「はっ! 岩本警視正から、連絡です。島民との接触に成功。島民は外部との連絡が取れなくなったのは一日前とのことです」
「一日前?」
隊員の話に、女性らしく整えられた眉が小さく動く。
そして、すぐに竜道寺へと風祭は視線を向けた。
「それは、おかしいですね。この島が陰陽庁により封印されたのは戦後間もなくだと聞いています。今日、昨日の話ではないはずです」
竜道寺は、出立の前に神谷警視長から渡された資料を思い出したながら答えた。
それを聞いていた純也は、「時間の流れが異なるということでしょうか?」と、発言する。
「時間の流れ――、可能性はありそうね」
純也の言葉に同意を竜道寺は示す。
自身の師である桂木優斗が時間を弄れたのだから、その可能性はあるのだろうと結論づけたからであったが。
「そんなことありえるのですか?」
超常現象が存在していると知識では知っていたとしても、実際に体験したことがない一般人感覚の風祭は疑問を呈する。
「それは分かりませんが、島民が嘘をついていなければ――」
そう竜道寺は言葉を濁す。
「それは、逆に言えば島民が嘘をついている可能性があるという事ですか? 貴方、風祭警視正は他に何か言っていましたか?」
「今日は、島の宿泊施設に泊まるとのことです」
「島の!?」
「はい。何でも外部と接続が取れなくなってから外部から来た客人ということで歓待してくれるとのことで」
「……怪しいわね」
風祭が呟く。
「はい。自分も怪しいとは思いました。外部との連絡が取れなくなってから僅か一日しか経っていないのなら、歓待するというのはあまりにも――」
「貴方は、そのことを風祭警視正には?」
「進言しましたが――」
最後の方の言葉を濁す部下に風祭は溜息をつく。
つまり怪しいと――、違和感があると説明しても無視されたということを部下が示唆していたことに気が付いたから。
「お二人は、どう思いますか?」
「俺は、すぐに島から出た方がいいと思います。明らかに今の現状は最初の想定と違うと思うので」
純也の意見に竜道寺も賛同するかのように頷く。
「峯山君」
「何でしょうか? 竜道寺さん」
「今の現状はおかしいというのは、どういう意味ですか?」
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