第788話 神社庁と大阪府警(2)

「それで、そちらは?」


 天野桔梗が、竜道寺が座ったあとに、その横に座った男二人へと厳しい目を向けて問いかける。


「これは失礼。私は大阪府警の岩本幸一と言います。本日は、宜しくお願いします」

「いえいえ。それで、そちらの方は?」

「谷口将司だ。大阪府警で刑事をしている」

「そうですか。それでは、メインは、こちらで全員ですか?」


 桔梗が確認するかのように視線を竜道寺に向ける。


「はい。それと、今回の主導は大阪府警がメインとなっていますので――」

「何か動く時には、私、岩本に確認してください。神社庁と陰陽庁は、独断専行が昔からよくあると聞いていますので、それは組織的には良くありませんから」


 岩本は、面倒くさそうに溜息をつきながら説明する。

 そんな様子に、桔梗は目を細めると口を開く。


「今回は、そもそも桂木優斗殿からの依頼という事で聞いていますが? そうですよね? 竜道寺さん」


 竜道寺が桔梗からの質問に答える前に、岩本警視正は、「少し勘違いなさっているようですが――」と桔梗に話しかけた。


「勘違いですか?」

「ええ。今回は高松警察署の管轄内ですが、大阪知事からの依頼で大阪府警が主導する形となっていますので、大阪府警の指示に従って動いてください」

「そうですか……」


 桔梗は、心の中で「政治的配慮なのね」と、呟きながらも、目の前の男二人に対して不信感を募らせていた。

 それは、彼女が長年経験してきた記憶と知識からであった。


「(この二人、何か隠し事をしているわね。それも、二人とも人殺しを平気で行う目をしているわ。これは信用しない方がよさそうね)」


 そう、桔梗は結論づける。

 それと共に、岩本警視正の言葉から――、


「つまり大阪府警の主導という事は、参加メンバーもそちらで選択するという事ですか?」

「はい。その辺は、適材適所ということで――」

「分かりました(これは、あとで純也に釘を刺しておく必要があるわね)」


 頷きながらも桔梗は現状について何か問題が起きそう打という事をヒシヒシと感じながらも頷く。

 そんな桔梗の様子を見ていた岩本警視正も、「(この女、見目麗しく、体も魅惑的ではあるが……気を抜かないような良さそうだ)」と、互いに笑みを浮かべながらも裏では警戒をしつつあった。


「それで、すぐに出立する感じですか?」


 警戒をした桔梗と岩本警視正を横において峯山純也は、竜道寺に話しかける。


「――あ、はい。既に船の用意は出来ているんですよね? 岩本警視正」


 竜道寺に話を振られた岩本は頷く。


「そうですね。すでに高松海上保安部へ応援の連絡はしています。すでに出立の準備は出来ていると報告はきていますし、必要人員の移動も済んでいます」

「必要人員? ここにいるメンバーだけでは?」


 岩本警視正の説明に、峯山純也は内心では首を傾げる。


「いえ。大阪府特殊部隊――、通称SATが20人と、地質考古学者が一チーム同行する手筈になっています」

「地質考古学者が?」


 純也は岩本警視正の話に疑問を浮かべる。

 今回は、数十年前に連絡が途絶えた島へのアクセスが主な仕事なわけで、まずは探索が重要視される。

 そのためには、手練れのメンバーだけで島の安全を確保することが必要。

 なのに戦えない人間を連れていくと。

そんなことをすれば守る必要が出てくる。

守るということは余計なリソースを割く必要になり、任務の効率を妨げるという事は、住良木と桔梗から教えられていた純也にとっては理解できない事であった。



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