第783話  都との会話(6)

「どうしたの? 優斗。呆気に取られた顔をして――」

「いや……。その……すまないな……」

「何がすまないと思っているの?」

「それは――」


 都と手を繋いだまま、俺は彼女を両手で抱きかかえる。

 白亜が使っている妖術などと違って、俺は空中に居るためには、常に物質形成して足場を作っている。

 そのために星の重力をモロに受ける。

 なので、都の体を抱きかかえないと彼女の全体重を片腕で支えることになる。

 俺の方は別にそれで問題ないが、体を鍛えていない都が、それに耐えられるはずもなく、俺は重力の作用が代わる前に、都を抱きしめたのだが――、


「ゆ、優斗!?」

「その……あれだ……。俺は白亜と違って妖術などで空中に待機していられるわけじゃないからな。だから――」

「私が落ちないように――、落下しないように、引き寄せたってこと?」

「ああ。そうなる」

「へー。そうなんだね」

「なんだよ……」

「ううん。でも――」


 都が両腕を俺の首に巻き付けてくる。


「こんなことをしても優斗は何も出来ないよね?」

「からかっているつもりか……」

「そんなつもりはないわ。だって、優斗は私のことを必死に助けてくれたもの」

「はぁー」


 あとで白亜には――、


「ねえ? 優斗。白亜さんは、優斗のことを心配してくれていて――、私のことも思ってくれて手助けをしてくれたの。だから――」


 本当に、吐息が掛かるくらいの至近距離からの都の瞳に見つめられながら語りかけられた言葉に、俺は離れることも出来ずに――、


「分かった。不問にする」

「そう。よかった」

「まったく――」

「ねえ? 優斗」

「何だ?」

「どうしても異世界で何が起きたのか本当のことを言えないのなら、私、優斗が教えてくれるまで待つから」

「……」


 いきなりの方針転換だな。

 俺としては嬉しい限りだが、何か心境の変化があったのか?

 

「――でもね! 一つ条件があるの!」

「条件?」

「うん! 優斗が、白亜さんの代わりに私を守ってくれるのなら」

「それは……」

「駄目?」

「…………分かった。だが、非常時はどうしても抜けなくてはいけないときは白亜に護衛を任せるが、それでもいいか?」

「非常時?」

「ああ。俺には警察署での仕事もあるし、何よりも今度、海外に行かないといけないからな」

「海外って! 留学っ!?」

「違う。少しの間だけ海外に仕事で行くだけだ」

「それって……危険なことじゃないよね? 優斗が異世界で得た力を使うことじゃないよね?」

「それは――」

「私も一緒にいく!」

「何故にそうなる……」

「だって! 優斗、一人だけだと危ないもの!」

「別に俺は一人で問題ないが……」

「そういうことじゃないの!」


 頬を膨らませている都の表情に俺は深く溜息をつく。


「分かった。――それじゃ、しばらくは俺の傍に居てもらう事になるが問題ないか?」

「うん」



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