第768話 部下の功績には報奨を出すのが上司の仕事だろう?(1)

 ――千葉県警察本部内の一室を改装した室内。

 そこは、日本国政府の直轄であり内閣府直轄特殊遊撃隊の部屋であった。

 そんな部屋の中には、二人しか居らずデスクワークに従事ていた。


 ――トゥルルルル


 静まり返った室内に内線の音が鳴る。

 すぐに部屋の中で仕事をしていた女性――、神谷警視長が電話を取った。


「はい。日本国政府、内閣府直轄特殊遊撃隊です」


 澄んだ声色で電話に出た神谷は、何度か電話相手に相槌を打つと、保留にしたあと桂木優斗の方へと視線を向けた。


「桂木警視監」

「どうした?」


 俺は、電話に出た神谷の表情がすぐれていないことに気が付き面倒な電話なのか? と、気を引き締める。


「警察庁の上の方から電話です」

「警察庁の上の方? ――ってことは……誰だ?」

「警察庁長官次長、山伏(やまぶし)生人(いくと)警視監です」

「山伏ね。警視監ということは俺と同じ階級ということか?」

「はい。一応は――。ただ、次長ですので……将来は警察庁長官の可能性が非常に高いです」

「なるほど……。――で? 俺に何の話だ?」

「実は竜道寺警視の件です」

「竜道寺? こっちに戻ってきてるんじゃないのか?」

「そのはずですが……。私も竜道寺警視に何が起きたのか確認していませんでしたので……特に非番でしたから」

「なるほど……」

「それではよろしいでしょうか?」

「ああ。回してくれ」


 俺は手に取っていた案件の書類――、陰陽師関係の仕事が書かれている用紙をデスクに置いたあと、保留されていた電話をとる。


「桂木優斗だ」

「……ちっ」


 おい! 何だか知らないが舌打ちされたんだが?


「電話の取り方も知らないのかね? 君は? それで、よく組織の長が務まるものだ」


 いきなり文句から始まったが?


「要件がないなら電話を切るぞ? 俺も暇じゃないからな」


 ガチャと電話を切る。

 まったく用事があったから電話をしてきたんだろうに、いきなり文句から始まるとかどうなってんだ。

 電話を切ると、すぐに内線が鳴る。

 

「桂木警視監、また次長から電話が……、かなりご立腹のようです」


 神谷が何度か謝罪を口にしていたが、礼儀を知らんやつに礼儀を尽くす義理はない。


「分かった」


 短く答えて電話を替わる。


「俺だ」

「――ッ!」


 何だが、電話口から歯ぎしり音が聞こえてくるな。


「悪戯電話なら切るぞ? こっちは仕事が推しているんだ」

「桂木警視監! 君は、目上の者に対する礼儀をなんと心得ているんだね!」

「礼儀正しく接してくるのなら、俺もそれなりの態度で接するが? 貴様が、最初の電話の時に喧嘩を売ってきたから正しく買ってやったんだろうに」

「……ギリギリ」


 おっと! なんか知らないが相手の琴線に触れてしまったようだな。


「君は! 君は警察組織をなんと思っている!」

「何とも思っていないな。そもそも俺は自分の給料から陰陽庁の運転資金まで全て自腹で運営しているし、国からの援助を一切受けていない。つまり、警察組織としての身分は保証されているが、実際問題、自分の食い扶持については自己裁量で稼いでいる。この意味が分かるか?」

「ああ言えばこういう!」

「ということはだ。俺は警察官としての身分はあるが、それは身分だけであって実際の稼ぎは国や警察組織に依存していないということだ。なので、お前らの組織のことなんてどうでもいい」

「――っ! ――言ってくれるではないか! 君の警察官としての身分がどうなっても!」

「別に問題ないが?」


 そもそも警察官の身分なんて俺の知ったことではない。

 逆に警察組織としての身分が無い方が国からの依頼に関してぼったくれるから、身分が無い方がいいまである。

 

 

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