第761話 瀬戸内海事変(3)

「それは……。桂木警視監は、かなりシビアな考えをされますね。同じ警官が死んでも問題ないって……」


 神谷が若干、表情を曇らせながら話しかけてくる。


「問題ないだろ? 戦士や冒険者が死ぬことは良くあることだからな」

「戦士や冒険者ってゲームではないのですから」

「違いはないだろう? 警察官や治安維持部隊は、国民を守るのが仕事であって、そのための仕事で給金を貰っているんだろうに」


 まぁ、異世界とは若干異なるが、少なくとも竜道寺は俺と同じように考えている。

 だからこそ、修行をつけてやっている。

 そもそも自分の身可愛さのやつが俺の修行に耐えられるとは思えないが。


「それは、そうですが……。同じ警察学校を卒業した仲間というか……。桂木警視監は、警察学校を出ていませんから……。あっ――、すいません」

「気にすることはない。そもそも、俺が警察学校どころか高校も満足に現状では通っていないからな」


 その俺の言葉を聞いた神谷は一瞬、首を傾げたがすぐに表情を戻すと――、


「桂木警視監、やはり学校についてですが、来週からは開始できるとのことです。場所は――」

「千城台だろ?」

「はい」

「まぁ、これで多少は問題が解決すると言ったところか」


 俺は手元の書類に視線を落としながら呟く。


「そうなりますと、桂木警視監も学校に通うことになりますね」

「そういえば、そうだな……」


 そうなると純也や都と顔を合わせることになるのか。

 二人と顔を合わせるとなると、複雑だな。

 思わずため息がでる。


「学校に通うのは気が進みませんか?」

「そんなことはない」

「そうですか。ただ、警察官僚――、上層部からはやはり東大法学部は出て欲しいという意見が出ていますが」

「まだあるのか……」

「はい。警視監という立場上、それなりの大学を出ていることが要求されますから」

「能力主義にならないものか……」

「桂木警視監なら問題ないと思いますが、それは日本政府が許可を出したとしても警察官の中では腑に落ちない者がいるということは変わりませんから」

「はぁー。――と、とにかくだ。明日には、大阪府警察署に到着できるように手筈を整えておいてくれ」

「分かりました。すぐに手配をします。ただ、大阪でしたら車で行ってもいいのではありませんか?」

「それでもいいか。じゃ、今日の夜中にでも、公団に車を回しておいてくれ。明日から超常現象の任務を行う竜道寺にはさすがに長時間の運転はあれだからな」

「分かりました」


 あとの問題は大阪府警察署の面々とゴタゴタになるのは目に見えているという部分か。

 

「それでは桂木警視監と竜道寺君と言うことでいいですか?」

「――ん? 何を言っているんだ? 現地に行くのは神谷と竜道寺だけだぞ?」

「え? 桂木警視監はいかないのですか?」

「当たり前だろう。純也とはゴタゴタしたまま別れているんだから、俺が行ったら面倒事にしかならないだろう?」

「――わ、分かりました……」


 神谷が渋い表情で頷いた。

 



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