第760話 瀬戸内海事変(2)
「桂木警視監、どうかされましたか? 作戦会議って、もしかして瀬戸内海の件ですか?」
どうやら、考えていたことが口に出ていたようだ。
「そうだな……。まぁ、それなりに鍛えてはいるが……」
純也と一緒に行動するとなると、色々とありそうだからな。
だが、今日一日は、オフということで竜道寺に伝えてあるし、いきなり仕事の話をするのも違うだろうし。
「それでは竜道寺君。すぐに登庁してください」
「――!? ――お、おい! 神谷っ」
「非番中に呼び出しは警察官、刑事には良くあることです。それに瀬戸内海の件に関しては、少し問題がありまして――」
「問題? 神社庁が断ってきたのか?」
「――いえ。そうではなくて……。今先ほど、大阪府警経由で連絡があったのですが……」
「大阪府警経由?」
どういうことだ?
確認するように神谷を見ると、神谷は、コピー機に近づく。
すると数秒遅れて、一枚の紙が印刷される。
「こちらを見てください」
コピー機から取り出した一枚の用紙。
そこにはメールの本文が書きだされていたが――、そこには大阪府警の警視と警部補が瀬戸内海の陰陽連が結界で隠している島に同行するという旨が表記されていた。
「マジか?」
「はい。大阪府警の本部長が無理やり捻じ込んできました」
「そこは、内閣府直轄特殊遊撃隊の特権で断ることが出来なかったのか?」
「じつは――」
俺の確認に困ったような表情をする神谷。
「大阪知事が今回のことに絡んできているようです」
「大阪知事が?」
「はい。野党第一党の威信会の吉田氏が大阪府の知事をしているのですが、近年では失態が多く地盤が揺らいできたこともあり、陰陽庁が隠していた島を何らかの形で手柄として利用して府民からの好感度を上げたいという考えがあるようです」
「馬鹿なのか……。霊能力者が10人以上、行方不明になっている場所だろう? そんなところに何の力もない警官を投入したところで死体になることは簡単に考えれば分かることだろうに」
「そのことは、先ほど何度も方面本部長へ報告はしたのですが……」
「もしかして、さっきから何度も部屋から出ていったのは――」
「はい。方面本部長へお願いをしていました」
「ですが、各国が参加を辞退したことで数千億円の赤字を計上し失敗した大阪万博。エネルギー政策における入札を中国企業に一任したということが重なり、周りが見えていないのか自身の失態を挽回するために、政治的行動を取っていたので、話が通じませんでした」
「あー」
神谷の疲れた様子に、そういうことあるよな……と、俺は異世界の俺を召喚した王侯貴族を思い出して思わず苦笑する。
「しかし、まぁ――。ずいぶんと大所帯だな。警視に警部補に警官が5人、さらに特殊強襲部隊SATを20人、封印された島に投入するとか……。こんなのよく内閣が許可を出したな……」
「そこは威信会の代表の吉田氏が大阪府知事ですから、止めることは出来なかったようです」
「はぁー。まぁ、一般人じゃないから死んでも問題ないだろ」
そう俺は結論付ける。
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