第759話 瀬戸内海事変(1)
千葉県警察本部に登庁し、神谷に竜道寺について詮索されたが、一日暇を出したと説明をし職務につく。
「それにしても、未だに諏訪湖の事件の書類があるんだな……」
俺は、デスクの上に積まれている書類をうんざりとした目で見つめる。
「亡くなっている人が多いですから」
「大抵は生き返らせたはずだが……」
「それは、昨日までの分です。本日、片付けてもらっている書類は、警察と国が処理しないといけない死亡者リストと確認になります」
「はぁー」
思わずため息が出る。
どうやら長野県諏訪湖近辺で起きた事件は、不慮な事故や、不発弾の爆発などで片づけることに国はしたようだ。
中国と、その工作員、ファイアーセールについては日本国民には知らせないという方向らしいが。
「色々と面倒だな」
俺は書類にサインをしながら、山積みになっている用紙を片付けていく。
「そもそも、こいつらはテロリストだろ? そんな奴らが死んだところで何の問題があるんだ?」
「テロリストだからこそです。親類縁者が、テロ思想に染まっていないとも限りませんから」
「つまり、今後の動向を見るために必要ということか?」
「はい」
「なるほどな」
異世界では、テロ行為をした家族は一親等――、下手すると二親等まで丸ごと斬首だったから、その発想はなかったな。
「つまり、俺がサインしているのはデータベース作成のためにも必要ということか?」
「そうなります」
「それなら仕方ないな」
まぁ、給料も貰っているし、依頼料も貰っているから、その分の仕事はすることとしよう。
「そういえば、桂木警視監」
「どうした? 神谷」
「竜道寺君に関してですが……」
「竜道寺?」
「はい。今日は、休ませたということですが、何かありましたか?」
「別に何もないな。ただ、修行で色々と根を詰めていることもあったからな」
「そうなのですか……」
「ああ。それにしても、神谷が気にするなんて珍しいな?」
「そうですか?」
「まぁ、いいが――」
話題もとくになく神谷との会話を切り上げて仕事を続ける。
何度か神谷が部屋から出て行ったが、まぁ、そのへんはどうでもいいとして――、先ほどから送られてくるメールに俺は思わず何度目かというため息をついた。
「あいつらは何をしているんだ……」
千葉駅前の総合デパートと思わしき場所をバックに、エリカと胡桃――、そして竜道寺の写真? が、スマートフォンに送られてくる。
どうやら、一日、暇を出したことに――、その意味を白亜に伝えたところで町に繰り出すことにした三人――、エリカ、胡桃、竜道寺はショッピングを楽しんでいるらしい……と、言うことだけは、スマートフォンの画面に写っている写真から伝わってくる。
「(完全に竜道寺は、着せ替え人形と化しているな……。まぁ、女としての経験はエリカや胡桃の方が上だからな……。そこは致し方ないと言ったところか)」
心の中で突っ込みを入れていると、一通のメールが届く。
それは、内閣府直轄特殊遊撃隊宛てに届いたメールで、開くと神社庁は既に瀬戸内海近くのホテルに滞在しているという内容であった。
さらに読み進めていくと、早い時間に霊障が発生しているエリアへと向かう前に早めに作戦を相談したいという内容。
「……そういえば、作戦とか何も考えていなかったな」
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