第753話 神滅拳
「師匠」
次元の迷宮内――、その迷宮内の開けたドームの中に作りあげた一軒家のリビングで、伊邪那美の手料理に舌鼓を打っていたところで、竜道寺が語りかけてきた。
「どうした?」
「師匠から教えてもらった呼吸法ですが、ある程度は出来るようになったと思うのですが……」
「まぁ、そうだな……。問題は、いまだのブルースライムを倒せないところに問題があるわけだが」
「それは、何も言えないです……」
まぁ、ブルースライムを倒すためには、腕輪を完全に使いこなす必要があるからな。
100年程度の修行では、倒すのは難しいだろう。
ただ、アガルタの世界においてブルースライムは、火・土・風の魔法なら簡単に倒すことが出来る。
そして、異世界アガルタでは、大抵の人間は生まれたばかりの赤ん坊でも魔法を扱うだけの魔力を有している――という話だった。
なので、冒険者になれる年齢になれる13歳では――、冒険者でなくともブルースライムは瞬殺できるほどの雑魚扱いされていた。
問題は、攻撃魔法が使えない人間にとって、ブルースライムは強力な酸を有しているので、下手をしたら小国の一地方の町の軍隊と同等の力を有しているワイバーンよりも倒すのは難しい。
まぁ、異世界では攻撃魔法を使えない奴なんていなかったから、そんなことはありえなかったが。
「まぁ、腕の一本の再生まで3秒ほどでいけるようになったのだから大きな進歩ではあるがな」
「――でも、倒せませんよね」
「そうだな。欠損した細胞を瞬時に補填できるだけの再生能力があれば、再生しながらスライムの核をブチ抜くことはできるんだが……。そのためには数千年は呼吸法の修練をしないといけないが……」
「それは人間の魂では難しいということは、妾は伝えたが?」
ポイズンドラゴンの肉――、その唐揚げを大皿に載せて運んできた伊邪那美は、俺に注意しながら口を挟んでくる。
「分かっている。――と、言うことで呼吸法の修練は続けながら、『桂木神滅流』の基礎を教えることになる」
「桂木神滅流ですか……それよりも、私は未だに基礎も教えてもらってはいなかったのですね」
「まぁ、下手に教えると肉体が消滅するからな」
「そんなに危険なのですか……」
「まぁ、飯を食ってからだな」
食事を終えたあとは、次元迷宮の開けた場所でのレクチャー。
周囲には、木々もなく苔だけ。
水が流れている場所や、水たまりも存在はしていない。
広さは、東京ドームグラウンドくらいの広さ。
ただし、周囲の壁は赤黒い煉瓦で覆われていて、空には夕刻のような空が広がっていた。
だが、雲のようなモノはなく不自然この上ない作りをしている。
「さて――」
俺は体内の生体電流を操作し、細胞内で増幅させる。
そして――、体内を循環させることで肉体細胞レベルを強化させるとともに、肉体の表面にも生体電流を張り巡らせる。
途端に青い電荷がバチバチと体表の絶縁体でもある表皮と反発しあうことで音を立てる。
「す、すごい……」
「これが桂木神滅流、『神滅拳』だ。これを使うことで、本来の肉体の性能を発動者の任意により強化していくことが出来る」
「それって、何倍にも強くなれるということですか?」
「そうだな。――で! これが2倍と言ったところだ。これを精度を上げて、肉体に更なる負担をかけて、その負荷に耐えられるように肉体の再生速度を早くしていくと――」
俺は、さらに生体電流を体内で増幅させていき身体強化をする。
途端に、俺を中心にして直径5メートルの半円内に荒れ狂う紫電の雷が出現する。
「これが、『神滅拳』――、身体強化の極致とも言える『疾風雷神』だ。まずは、この『疾風雷神』を習得しろ」
「これって人間が習得できるモノなのですか? 師匠」
「大丈夫だ。習得できるできないを心配することはない。習得できなければお前が死ぬだけだから何も気にしなくていい」
まぁ、どういう方法をとっても習得させるから問題ない。
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