第752話 呼吸法の習得

 呼吸法の基礎を竜道寺に教えてから1年が経過し、反復することで呼吸法を体に覚えこませていく。

 それと並行して次元のダンジョンのモンスターの肉を伊邪那美に調理させることで、モンスターが固有で保有している毒を体内に馴染ませるようにしていく。

 なお、伊邪那美はモンスターの肉を料理することにイライラしているようだが、次元のダンジョンのモンスターには即死系や永久持続する毒が含まれているので、それに体を慣らすことは、毒耐性を体に持たせることで有用的である。


 食事を摂った後は、次元のダンジョンのモンスターを倒すための修行の開始。


「ハアアアアアアッ!」


 戦闘の呼吸法により、動作がスムーズになりつつあった竜道寺の手刀が、ブルースライムの体を突き破り――、そして二の腕まで強力な酸により蒸発した。


「――くう」


 痛みに堪えながらも、距離を置く竜道寺。

 

「スウウウウウウウハアアアアアア」


 深く深呼吸をしつつ、深く早く呼吸を切り替えていく。

 体内に巡らす酸素の量を徐々に増やしていくごとに、毛細血管まで膨大な酸素を流す様子を確認する。

 それと共に、竜道寺の二の腕の解けた部分に細胞や血が沸騰していくような様相が見て取れたあと、右腕が再生されていく。

 完全に右腕が再生されたのは、回復の呼吸を使い始めてから10秒ほど。


「ずいぶんと早くなったようじゃな」


 俺の横で竜道寺の修行を見ていた伊邪那美がそう語りかけてくる。


「理想は1秒だな」

「そんなことが可能なのかえ?」

「大丈夫だ。俺が教えているからな。もっと言えば細胞が蒸発した瞬間に再生できれば完璧だ」

「そんなことが出来るのは地球上でもお主くらいなモノじゃろう?」

「まぁ、そのためには腕輪を使いこなすのではなく腕輪が無くても自身の体内の細胞修復を自身の意思でコントロールする必要が出てくるがな」

「そんなことが可能であるのか?」

「修練次第だな」

「ふむ……」

「それにしても、この迷宮はどうなっておるのじゃ? 見たことがない妖怪ばかりじゃが……」

「妖怪じゃなくて魔物だな」

「魔物か……。桂木優斗、お主からは時々、まったく別の世界で生きてきたような考えを感じることがあるのう」

「そうか?」


 俺は肩を竦めて誤魔化すことにする。

 そんな俺の態度に伊邪那美は呆れたような表情を見せたあと、「お主は、何も話さないのじゃな」と、呟くが――、俺はその言葉を無視することにする。

 伊邪那美は既に俺が神の力を有しているという嘘は看過している。

 そのくらいは理解している。

 だからこそ、俺が、人間から掛け離れた力を有しているのか気になるのだろう。

 そういう理由から、パンドラの箱の中で数十年一緒に暮らしている中で、俺の力の根源を遠回しに聞いてきてるのだろう。




 ――修行を初めてから100年が経過したところで、ようやく竜道寺は、回復・戦闘の呼吸法の基礎を身に着けることが出来た。

 


 

  

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