第732話 いつから筋トレ以外の修行を軽くすると勘違いしていた?
伊邪那美からのクレームを受けた翌日、「師匠、今日も引き続き肉体改造ですか?」 と、竜道寺が顔色悪く聞いてくるが、俺は頭を左右に振る。
「今日から! 技の伝授に入る!」
「ええっ!? お、俺――、まだ肉体の方の準備が出来てないと師匠言っていませんでしたか!?」
「ふっ、大丈夫だ」
「な、なにがですか?」
「技の稽古に入れば自然と筋力や体力が身に付く。何せ、この俺が直々に教えてやるんだからな」
「そ、それって……、いままの修行の……」
「大丈夫だ。死んだら生き返らせてやるから」
「やっぱり地獄が……」
「まぁ、その前に、お前に伝授する技系統を説明したいと思う」
「つまり座学ですか?」
「ああ」
俺は地面からホワイドボードを作りだし、黒いマーカーで文字を書いていく。
「竜道寺、お前に教える技は神殺しの拳技となる」
「神殺し……」
「不安か? 神を殺せる技なら、雑魚モンスターどもも一蹴できるから安心していいぞ」
「――い、いえ。問題はそこでは……」
「弟子の言い分は聞かん! では、俺の講義を続行する」
「あ、はい……」
「まず、お前に伝授するのは俺が作り上げた技の一つ、【桂木神滅拳】だ」
「それって厨二――「何か言ったか?」――い、いえ! 何でも!」
「――で、だ! 桂木神滅拳は5つの体系に分かれている」
「5つですか?」
「ああ。まずは――」
俺は身体強化をした上で拳を空中に繰り出す。
音速を遥かに超えた正拳付きは、空中に存在する大気を打ち出す。
所謂、空気砲と原理は同じだ。
数百メートル離れた地面に不可視の空気砲が着弾し、高さ200メートルを超える土柱が上がる。
「これが桂木神滅拳の五系統の一つ【弾】になる」
「……ま、まさか……これを自分に覚えろと?」
「当たり前だ。ちなみに、これは身体強化が出来れば誰でも出来るようになる。今のお前の体のスペックなら出来るはずだから頑張ってみろ」
「――わ、分かりました」
一応、伊邪那美に魂がすり減るような肉体改造は控えるようにと言われていたが、まあ、大丈夫だろう。
とりあえず伊邪那美は、まだ家から出てきてないようだし、家内の時間の流れだけ遅くしておくか。
伊邪那美と俺たちの体感時間を、数万倍に引き延ばした結果――、
「――で、できた……」
竜道寺は、ようやく身体強化が出来るようになった。
そして空気弾も打てるようになった。
威力は軽自動車を吹き飛ばす程度の威力だが、まあ問題ないだろう。
「よくやったな!」
俺は竜道寺の頭に手を置くと時間を理解できないように脳内をちょっちょいと弄って修行に専念させる。
時間という概念を理解するから人間は駄目だと伊邪那美は言っていたので、そこを理解できる能力がないのなら何の問題もないということだ。
「しかし、最初の系統を覚えるだけで2000年経過するとは予想外だな。時間を引き延ばしたとは言え」
「あ、あの! 師匠! 『私』! 頑張っていますよね!」
「まぁ……な」
何だか女らしい話し方に1000年を超えた時点で変わってきたが、とくに問題はないだろう。
そのへんは伊邪那美に何とかしてもらえばいいし。
「よし! 引き続き修行の続行だ!」
「はいっ! 師匠!」
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