第717話 さあ、修行の始まりだ! (2)

 ――午後6時を過ぎたところで、「桂木警視監、書類の方は以上となります」と、俺が目を通した書類に関して、チェックをしていた神谷が、OKを出してきた。


「はぁ、疲れたな……」


 肉体的には疲れていないが、精神的な疲労感が半端ない。

 そもそも俺は、デスクワークは苦手だ。


「それにしては、手慣れているように感じましたが」

「まぁ、10年近く同じようなことをしていたからな」


 主に冒険者ギルドの受付の手伝い依頼とか。


「10年ですか? 桂木警視監のご年齢は……」

「冗談だ。それよりも竜道寺は、どこに行ったんだ?」

「近くの公園の交通指導で交通課の人に駆り出されました」

「ほう……」


 そういえば県庁近くには、そういう交通指導をするような公園があったな。

 そこに行ったのか。


「桂木警視監がお忙しいようでしたので、私の一存で行かせましたが問題でしたか?」

「――いや、何の問題もないな。それにしても、どうして竜道寺が交通課の連中の手伝いに行ったんだ?」

「一応、桂木警視監が婦警の勉強もさせた方がいいような事を言っていましたので」

「そんなことを言ったか? 俺は女の体が人間のベースだからと言っただけなんだが……」

「はい。ですから、女性警官の仕事もさせて経験を積ませようと、あと、彼というか彼女というか竜道寺君は、今は美女婦警という見た目ですよね?」

「まぁ、そういう風に遺伝子操作と遺伝子組み換えも行ったからな」

「――ですので、見目麗しいというのは、プラス要因ですから。綺麗で可愛い――見た目だけでも――、そんな婦警が交通指導に居れば、皆さん、楽しく交通指導の教室で学んでくれると思いましたので」

「そういうことか」

「はい」

「まぁ、普段の業務に関しては神谷に一任しているから好きにしてくれ」

「分かりました。それと、桂木警視監にお願い仕事がありまして――」

「仕事?」

「はい。すでに桂木警視監も目を通して頂いておりますが、高ランクの霊障問題が陰陽連時代から放置されていまして、それが日本全国に点在しています」

「つまり、それらを俺に解決してほしいと? 村瀬だと難しいのか?」

「一応、村瀬君も陰陽連ではトップの実力者ですが、Aランク以上の霊障に関しては、陰陽師一人では、どうしても対処ができない部分があるとのことで」

「ふむ……」


 俺は考える。

 別に俺が対応してもいいんだが、ハッキリ言って、俺には霊障とか幽霊みたいなモノに関しての対応に関してはどうしても後手に回ることがある。

 理由は、相手から俺に干渉してこないと、こちらからも手出しができない部分にあるわけだ。

 まったく相手が俺に干渉してこない場合、時間も労力も浪費になるのは言わずもがなだ。


「あっ!」

「どうかしましたか?」

「峯山に仕事を振って見たらどうだ?」

「それって、桂木警視監の友人でしたか?」

「ああ。今は住良木や天野との修行中だからな。実戦経験を積む上では丁度いいだろう」

「いいのですか? 一応、御友人ですよね?」

「まぁ、大丈夫だろ」


 アイツ、勇者の素質も持っているはずだし。

 それに式神もそれなりに強いからな。

 あとは住良木と天野が一緒に同行するのなら、ほぼクリア確定な部分があるだろうし。

 

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