第705話 奇跡の聖女(19)

 方針も決まったところで、神谷が立ち上がり部屋から出ていくところで此方を振り向いてくる。


「桂木警視監」

「どうした?」

「被害者のご家族は病室に通しても問題ないでしょうか?」

「ああ。大丈夫だ」

「分かりました」


 パタンと扉が閉まったところで、


「何だか気疲れしました」

「その体か?」

「それもありますが……このピンク色のナース服も……やけにスカートが短いですし……」

「まぁ、病院エロゲー系の制服から作ったからな」

「やっぱりですか! それにしても、見る分には良いですが、自分が着るとなるとスカートもスースーしますし、色々とあれですね」

「癖になるか?」

「なりません」

「それは残念だ」


 俺は足を組みながら答える。


「それにしても桂木警視監は女性の体には慣れているのですね」

「まぁ、いろいろと使えるからな」


 とくに異世界ではな。


「はぁ……」

「さて、とりあえず俺たちも帰るとするか? 警備は他の警察連中に任せておけば問題ないだろうからな」

「はい」


 院長室から出たあとは、何人かの警察官と病院内ですれ違う。

 その都度、こちらを凝視してくるが俺は無視して、そのまま病院を出た。

 車に乗り込み、竜道寺も遅れて到着したあと、運転席へと乗り込む。

 車のエンジンが掛かったところで、運転席に座っていた竜道寺が深々と溜息をつく。


「なんだか、あれですね。この体になってからというもの……男の視線が胸に向けられるのがよくわかります」

「だろう? まぁ、男なんてそんなモノだ」

「はあ?」

「とりあえず、千葉県立山王高校に向かってくれ」

「そこは今は封鎖されているはずでは?」

「だから丁度いいんだろう?」

「分かりました」


 俺が意見を変えないと理解したのか竜道寺が運転する車は元・千葉県立山王高校へと向かう。

 途中、何台かの車とすれ違い、千葉県立山王高校まで続く坂道下に到着すると、バリケードがあり警察官が4人立っていた。

 警察官は、バリケード前に停まった俺たちの車に近づいてくる。


「君達、ここは通り抜けできないから」

「桂木警視監、どうしましょうか?」

「問題ない」


 俺は、千葉県立山王高校に向かう間に男に戻っていたので、警察手帳を取り出し竜道寺に渡す。


「何時の間に男に……」


 恨めしそうに、そんなことを呟きながら俺から警察手帳を預かった竜道寺はバリケードの警護をしていた警察官に俺の警察手帳を渡す。

 すると、どこかに連絡を始めた警察官はバリケードを開けてくれる。


「通って良いとのことです」

「だろうな」


 車は坂道をのぼっていく。

 到着したのは、千葉県立山王高校の工程。

 未だに陥没があった場所は手付かずのまま復旧が終わっていない。


「さて、竜道寺」

「何でしょうか?」


 俺は、竜道寺の方へと向き直る。


「戦いに必要なモノというのは何だと思う?」

「それは経験ですか?」

「そうだ。だから、今日からは火事場の馬鹿力を使えるように神経を鍛える事と並行して戦闘訓練である死合いをする事とする」







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