第702話 奇跡の聖女(16)
「いえ。思春期特有の男子高校生だと思って安心しました――、と! 言えばいいのでしょうか?」
「お前、フォローしているようでフォローしてないからな」
まったく、せっかく俺が親切心から竜道寺の服をグレーのスーツだと女の体に合わないからと原子構成を変えて作ってやったというのに。
「それで、その容姿と服装のまま病院内に入る予定ですか?」
神谷が、俺と竜道寺の恰好と容姿を見て確認してくる。
「ああ。そのつもりだが、何か問題でもあるか?」
「分かりました。それでは、話をつけてきますので、ここで待っていてください」
俺から離れた神谷は、元・山王総合病院入り口に小走りで向かったあと入り口を警護しているような素振りを見せていた警官と話したかと思うと戻ってくる。
「話はつきました。病院内に向かいましょう」
「ああ。竜道寺も向かうぞ」
「えええ!? ――お、俺は! この姿のままですか!? ひぅん!」
「――り、竜道寺警視!? どうかしたのですか?」
神谷警視長が、竜道寺に慌てて近づき、その肩に触ろうとして手を伸ばす。
「あー、神谷」
俺は神谷の名前を呼ぶ。
そして、竜道寺の感覚が100倍になっているから触らない方がいいと忠告をしようとしたところで、神谷警視長は心配そうな表情で竜道寺の――、女になった細い肩に手を置く。
途端に、体をビクンビクンとさせて竜道寺が口から泡を出して股間を濡らしながら駐車場のアスファルトの上に倒れた。
「……え?」
竜道寺の肩に手を置いたままの状態で――、倒れたことで空中で手を止めたままの状態で何が起きたのか分からない神谷警視長は、俺の方を見てくる。
「感度が常人の100倍になっているから、普通に触るだけで竜道寺は気絶するぞ?」
「それを早く言ってください! それと、最初に――」
「ああ。大声を出したときに悲鳴のような声を上げたのも、その影響だな」
「……それって、必要なことなのですか?」
「まぁ、短時間で身体操作を覚えるためには必要なことだな」
「短時間って……短期間ではないのですね」
「当たり前だろ。俺だって一人に長期間稽古をつけられるほど暇ではないからな。さて――」
俺は、竜道寺の太腿に触れ、その体に――。
「アババババアッバアバッバババアッババババババ」
電気を流す。
それにより、体を高速で痙攣させる竜道寺。
「う、ああ……オロオロロロロロ」
「よし、目を覚ましたな」
目を覚ました竜道寺は、駐車場の花壇で嘔吐をしているが、うまく起きたようで何よりだ。
「ひ、ひどい……」
神谷が、俺を見て何か言っているが師匠は弟子を強くするために何でもするモノだ。
そこに論理感や倫理観は必要ない。
そもそも俺に弟子入りした時点で、強くなるために人間扱いされない事くらいは理解しているはずだ。
エリカや、白亜レベルの凸出した才能があるのなら話は別だが。
「おい。竜道寺」
「……し、師匠」
「何時までも吐いてるな。時間が勿体ない。さっさと行くぞ」
「――で、ですが……」
色々といろんなモノでナース服が濡れた竜道寺は困った表情をしている。
「まったく――、世話の焼ける奴だ」
。竜道寺の服に手を置き、ナース服を再構成。もちろんタイツや下着も全て黒で統一する。
「完璧だな」
「桂木警視監。一体、何をされたのですか?」
後ろに立っていた神谷が確認してくる。
「原子構成を組み替えて新品の服を作り直した、それだけのことだ」
「原子構成!?」
「大した事じゃない。それよりも、さっさと遺体の処理にいくぞ」
「――は、はい」
神谷が納得いかない表情で頷く。
「竜道寺、お前も付いて来い。もう大丈夫だよな?」
「わ、分かりました……」
まったく、何故に駐車場でここまで時間を浪費しないといけないのか。
車のカギを竜道寺は閉める。
そのあとは、神谷を先頭にして、女医の恰好をした俺と、ナース服を着た竜道寺が続く。
幸い、既に話が通っているので山王総合病院の中にはすんなりと入ることが出来た。
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